株式会社Citrusの農場経営実践(連載53回)
~みかん収穫作業労力確保に限界を感じる~
佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役
2024年産温州ミカンは高値を推移している。このことは嬉しい状況であるが、みかん収穫の労力確保には苦慮した。収穫期を迎える10月、これまでにはこの時期に2人から3人程度のアルバイトの応募があり、みかん収穫時期までアルバイトの入れ替わりがあったが収穫現場には社員と研修生(地域おこし協力隊員)を含め常時5名から6名が収穫作業を進めていた。しかし、会社を設立して12回目の今期はハローワークやインディードで募集しても問い合わせがあるもののアルバイトを確保出来なかった。
そこで、外国人労力者確保に再びチャレンジした。5年前にカンボジアからの技能実習生を1年半ほど雇用した経緯があり本誌でも紹介した。しかし、仕事に問題は無かったが、会社のポリシーである人材育成とのずれが生じ中断した。それ後は農業を目指す青年等の人材育成強化に専念してきた。有田川町の地域おこし協力隊員の卒隊後の新規就農支援、また次世代の農業を担う人材を育成する研修生を受け入れたりして、我が社の園地は彼らで賑わっていた。
これまでの経験から彼らの新規就農を支援するためには優良な農地確保が不可欠であり、単純にほ場での管理作業経験のみでは新規就農は困難であるとの判断から、事前に優良農地の確保を急いだ。幸い優良農地の確保ができたが、地域おこし協力隊員が卒隊するまで我が社での管理となり、更に労力不足に拍車をかけた。

これらの背景からグロワー・シッパーとして連携している姉妹会社の「株式会社みかんの会」で4名の外国人を雇用した。日常2名がみかん収穫作業、2名は選果・荷造り作業にあたった。雨天で集荷作業ができない日は選果荷造り作業に4名投入し、選果作業のない日はみかん収穫作業に専念させ、温州みかんの収穫作業は年を越すことになったがなんとか切り盛りできた。
また、この状況の中で各種団体からのインターンシップの依頼を受け入れた。社員が産休でインターンシップ対応出来る状況では無かったが、多少の労力確保にもつながることから私自身が対応した。今期も昨年同様に有田川町主催のインターンシップ1名が、「きみの地域づくり学校」主催のインターンシップの2名を受け入れた。きみの地域づくり学校とは和歌山大学ときみの町が連携した社会教育のことで、我が社でのインターンシップには和歌山大学観光学部の学生2名が参加し4日間実施した。忙しい中であったがインターンシップを受け入れることでみかん園が賑やかになり社員共々みんな楽しそうに収穫していた。
しかし、次年度からの収穫労力確保を考えると、単純にみかん栽培のみの農業形態では労働力確保が課題となり持続可能かどうか疑問に思う。現実に高齢化し後継者がいない農家では今年度で農業を辞めるという声を聞く、農作物の価格低迷による離農より、労働力不足による離農が有田みかん産地にも見え始めたように感じる。


2025/1