-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

株式会社Citrus 株式会社Citrusの農場経営実践(連載38回)
~経営改善計画実行~

佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役

 朝日新聞の農業記者が弊社に「ネットで見た」といって電話による取材申込みが入ったのが最初である。取材前に本紙を渡して、「GAP普及ニュースに弊社の取組みが記載してあるので、まずそれを読んでから取材をして欲しい」と記者に伝えた。すると数日後、「GAP普及ニュースで確認が出来たので、改めて取材に伺いたい」との依頼があり、取材を受けることにした。朝日新聞の記者は、GAP普及ニュースをプリントアウトしており、また、私が15年前に取り組んだプロジェクトの記事『みかん栽培で新技術』(私の学位論文)の小ネタを朝日新聞のデータベースで見つけたと、その記事までプリントアウトして来社した。

 会社概要などは既に把握されていたが、記者が注目したのは、前号の巻頭言と実践(37)に記載した記事であり、「その具体的な内容を聞きたい」と掘り下げてきた。これまで会社の後継者として育ててきた社員の自立就農についてどう思うかと聞かれ、弊社の人材育成の目標としては始めて非農家出身者の自立は意義があるとしながらも、「会社の後継者問題はまた1から組み立て直さなければならない課題が生まれた」と述べたところ、記事(朝日新聞10月11日)の最後にそのことが記載されていた。

 さらにその記事を読んだNHK和歌山放送局のディレクターから取材の依頼があり、同様に本紙「GAP普及ニュース」を読んでから取材に来てくださいと伝えると、その場で検索したようで、本紙を探し出してその日はそれで話は終わったが、たいそう興味を持ったらしく、「改めて取材に伺いたい」というので時間を指定して対応した。ディレクターも本誌「GAP普及ニュース」をプリントアウトして持参してきており、前号の実践(37)を深掘りしてきた。NHKのディレクターに新規就農者支援の陰で会社の後継者問題があることを話したところ、「それらの現場の苦悩を番組で取り上げます」と言うことでディレクターのストーリー編集とカメラ撮影に併せて2日間の取材に協力した。放映はわずか6分間だったが、単なるニュースではなく、「就農支援と会社の苦悩」として紹介された。放映された内容は、来年退社予定の社員と今年新規採用した2名の社員と、そして有田川町が臨時職員として採用した地域おこし協力隊の男性研修員の合計4名が常勤していること、それに和歌山県農林大学校の就農支援センター社会人課程で研修を受けている有田出身の男性をインターンシップとして年末まで弊社に勤務していることなどの紹介があった。ディレクターのインタビューを受けて私が述べたことは、9年前に会社を設立してからこれまでの就農支援と耕作放棄地の借上げなどで地域への貢献は果たしてきたことは自己評価したいが、新たに自社の後継者問題を抱えることなったことである。その苦悩を、経営者の私と会社の後継ぎになる予定で入社したが、来春には新規の就農を決意した社員との葛藤がテーマとなった。インタビューとディレクターの解説で番組は構成され放映された。

 朝日新聞やNHKテレビでは会社の後継者課題への取組みについての報道はなかったが、具体的な方向としては昨年の本誌実践(32)に記載したが、ここ2年間で販売会社として既にある「株式会社みかん会」と連携でグロワー/シッパーとしてグループ化する計画を進めており、生産部門の担い手として新規採用した社員をこれから2年間で育成して行きたいと考えている。そして、有田みかん産地の新たな経営形態のモデルを築き上げていきたいと考えている。これらマスコミの取材を受け、改めて会社の継続者問題への取組みを決意している。

 最後に嬉しい知らせが届いたので報告しておくが、朝日新聞に農林水産省への不信を一部述べたが、別添の事業の「農業経営継続補助事業」の採択通知が届いた。弊社の計画は6次産業部門の加工作業現場での三密対策として柿チップスライサーの導入と、GAPに取り組む上で必要な加工商品配送専用の軽トラックを申請していた。軽トラックの採択は困難とされていたが、普通トラックは収穫物の運搬や肥料・農薬の散布用に使用し、洗車しながら両方を使い分けていたが、繁忙期の配送には会社代表者(社長)の自家用車を使用して対応している。しかし、今後6次産業部門の充実を図るため、配送のための社員と加工商品の安全を確保するためアシスト付きの軽トラックの導入を計画しところ、それが採択された。採択は嬉しいが、9月に採択結果を報告するとされていたのだが、「高収益作物次期作支援交付金」のもたつきで公表が50日程度遅れ、10月16日にネットで採択者が公開され、採択内容が通知されないまま20日間経過した11月7日に、10月16日付けの採択通知が届いた。事業実施は12月末で完了しなければならいとされているが、「年末までに基材が調達できなければ来年2月末まで」と記されていた。ここでも農林水産省の混乱ぶりがうかがえる。

 このような中で収穫繁忙期を迎えながら、幸い収穫支援者(アルバイト)がCitrusの活動を知り、応援に駆け付けてくれる環境が整ったことは大変有難いことである。

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