-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

株式会社Citrus 株式会社Citrusの農場経営実践(連載26回)
~各種人材育成支援に取り組んで

佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役

  この高校は、かつて農業専門高校として栄えた時代(著者が生徒だった頃)には農業コースがあったが、現在は普通科のみになっており、総合学科として農業コースが存在するが、十数名と少数になっている。弊社で体験した生徒の内、1名が近隣農家の子弟であり、その他の生徒は非農家の子弟であった。体験学習を終了した後は、全員が農業への興味を示した。

  実習体験指導を弊社の社員に任せたのがよかったのかもしれない。社員の一人は同校の卒業生であり、この制度の体験者であることから、うまくリードしてくれたようである。実習では、温州みかんの剪定技術を指導したところ、学校に帰ってから「温州みかんの選定が出来るようになった」と生徒が先生に自慢したと学校から報告を受けた。社員らは教えることの難しさを知ったようであるが、いづれにしても双方にとって良い学習の場となったと考えている。

  同校の教育課題に「生き方・在り方ゼミ」というのがあり、これに著者が農業生産法人として講師を務めた。2年生を対象に「様々なことでチャレンジし続けること」の大切さや、「日々一生懸命取り組むことが成功に繋がること」など、「社会で生きていく上で必要な心構えを教えて欲しい」との要望があり、課題が大きいので受けることを躊躇したが、農業分野の講師が少ないというので協力することにした。

  2月17日当日、学校に着くと24名の講師が一同に会して講義方法の説明を受け、それぞれの教室に向かった。やはり農業部門を受け持ったのは早和果樹園社長の秋竹氏と地元の農産加工業者、そして著者の3名であった。教室に入ると5名の生徒が待っていて、座談会形式で話し合いをした。生徒たちは卒業後の将来の目標について語ってくれた。1時間毎にクラス替えがあり、計8名の生徒を担当した。それぞれのクラスに農業を目指す生徒がいて、一人は農業大学校への進学を、もう一人は「農業に就農したい」としっかりと語ってくれた。学校の先生方の指導もあって・・と思うが、「それぞれがしっかりとした口調であったので安心しました」と担当の先生方に報告し、楽しい時間を過ごすことができたと挨拶して帰路についた。


生き方・在り方ゼミ(2017年2月17日)

  以上が高校生への支援活動の一端であるが、2016年度4月には、和歌山大学に食農総合研究所が設立された。その目的は、「地域創生」を牽引する人材の育成を目指して、和歌山県域内における農林水産物や食品の付加価値を高めることであり、地域経済の活性化に寄与することを目的とした研究を「学生教育に活かすこと」としている。最初の4年間は、文部科学省からの支援があり、その後の在り方は成果次第であるという。

  研究課題に、①都市と農村の共生、②地域資源の活用、③ICTの活用とあり、著者がICT活用のアドバイザーに依頼され、3月3日に初めてのアドバオザー会議に出席した。国の財政諮問会議にも登場する長野県飯田市の牧野光郞市長をはじめ、「チョーヤ梅酒」の専務取締役、日本総研の主席研究員、京都大学の教授など、他のアドバイザーの顔ぶれに驚いて、ちっと引いてしまったが、農業出身者は著者以外にはいない。会議では、GAPに触れ、ロンドンオリンピックにおけるレッドトラクターの役割などについて話をし、農業認証について提案したが、これにICT担当の教授が興味を示し、幾つかの質問が出た。アドバイザー会議の終了後、牧野市長の公開講座があり、聴講した。終了後の市長らとの雑談の中で、農業も地域連携をもっと強化しなければいけないことを学んだ。今後、この組織の動向は、弊社との関わりなど含め、機会があれば紹介していきたい。

  さて、弊社の本業では、昨年10月から「農の雇用事業」による社員教育に入っている。昨年3月、農業大学校の新卒者を社員に迎え、「農の雇用事業」による助成金を申請し、平成28年度の第3回で採択され、今年の2月に第1期目の助成金交付申請を行った。その結果、決算期の3月中に助成金388,000円が受けられることとなった。今回、弊社は2度目の採択を受けたが、2年間一括申請で毎年の申請は必要ないようであるが、正規社員として採用して4ヵ月が経過した後でないと申請できないように規制されていた。採択直後に事業実施説明を受けたが、参加農家から助成金交付申請書が簡素化されれば、申請したい近隣農家がいっぱいいることが告げられた。やはり報告内容は、1ヵ月単位から週単位に研修生と指導者の感想と所見を書き入れなければならないようになっていた。弊社としても、良い記録になるので有効活用させて貰っている。これは、研修生と指導者が共にICTを活用しているから容易に出来ているようである。「農の雇用事業」の担当者によると、現実に採択者の中にはICTが導入されていない場合があるので、申請指導に時間が必要であり、また、申請者も「これが大仕事である」と訴えていた。

  弊社では、2017年度の新卒者を新しい社員として迎えたいので、3月7日に農業大学校に対して社員募集を正式に依頼した。会社を設立して丸5年が経過し、少しは農業の後継者育成への支援が出来たかなと自負しているが、外部評価を受けるには経営実績を高めていかなければならないと考えている。


和歌山大学食農総合研究所 パンフレット引用

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