-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

GAP普及ニュース 80号

《巻頭言》
『プラネタリーバウンダリーと生態学的土づくり』

山田正美 一般社団法人日本生産者GAP協会 専務理事

地球科学的観点からの警告

 今から15年前の2009年に地球環境のリスクを示したプラネタリーバウンダリーという考え方が具体的な数字を伴って示されました。これは現在の地球環境がどのくらい危機的な状況にあるかを9項目にわかりやすくまとめたものです。プラネタリーバウンダリーで示された「リスク増大」あるいは「リスク大」の項目を「安全」なレベルまでリスクを下げていくことは、人類が将来にわたり持続的に生活していくうえで不可欠となっています。

 プラネタリーバウンダリーの最新版では9つの項目のうち、3つの項目が「安全」な範囲になっていますが、残りの6項目が大きなリスクの状態にあるという判定になっています。それらのリスク要因を見てみますと、ほとんどの項目で大なり小なり農業が関係しているというのが現状です。これに対して、さまざまな対策や取り組みが考えられますが、ここでは農業に関する代表的な取り組みを三つ紹介します。

  プラネタリーバウンダリー(Planetary boundaries)は、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念で、地球の限界あるいは惑星限界とも呼ばれている。

農業に期待される取組み

一つ目は気候変動の緩和に関して、大気中の温室効果ガスの濃度を下げて、脱炭素社会を実現することで「安全」なレベルに維持するということ。
二つ目は肥料(窒素、リン)や淡水の使用を適正なレベルに保ち、環境と農業を調和させるということ。
三つ目は生物多様性の保全で、生物種の絶滅を抑え、生物圏の健全性を保つということです。

地球科学的観点を考慮した生態学的土づくり

 上に示した三つの取り組みと土づくりとの関係はどうなのでしょうか。 一つ目の気候変動に関して、主な温室効果ガスは、化石燃料の燃焼等による二酸化炭素(CO2)、稲作、家畜の消化管内発酵等によるメタン(CH4)、農地の土壌・肥料、家畜排せつ物等による一酸化二窒素(亜酸化窒素、N2O)等です。耕起が有機物の分解速度を速めることが知られているので、耕起の回数や強度を減らすことでCO2排出の削減や、炭素、すなわち有機物を土壌に蓄積させることで貢献できそうです。

  二つ目のうち肥料(窒素、リン)の施用による淡水の汚染は、作物に利用されない余分な養分を施用しないことと、作物収穫後に残存している養分が溶脱しないように次期作までの期間にカバークロップを植栽するなどの対策が有効となります。淡水利用に関しては、土壌の保水力を高めることが有効です。そのためには、土壌生物の活動を活発にさせ土壌の団粒化を促進させることが有効だと考えられています。ここでも、耕起を少なくすることが土壌生物の生息密度を上げ、土壌の団粒化を促進し、保水力の向上につなげるものと考えます。

  三つ目の生物多様性の保全では、耕起を抑制し土壌中の有機物を土壌生物の餌として保つことで、多様な土壌生物を保全することができます。

カバークロップと減耕起・不耕起

 ここで、減耕起栽培や不耕起栽培で先行している米国の実態について、調査報告書『National Cover Crop Survey Report 2022-2023』を見ると、カバークロップ以外にも減耕起栽培や、不耕起栽培についても言及されています。その中で、アンケート回答者はカバークロップを栽培していることが不耕起栽培や減耕起栽培への移行を容易にしていると回答しています。その理由としては、カバークロップが土壌構造を改善していることを挙げています。具体的には、土壌水分の管理が容易になったこと、土壌圧縮が少なくなったこと、雑草防除が良くなったことを挙げています。

 これらはいずれも、カバークロップを併用することで、耕起を減らすことがとても効果的であることを示しており、昨年日本生産者GAP協会が翻訳・発行した「実践ガイド 生態学的土づくり」の図24.2にも同じようなことが掲載されています。

農業で出来ること

 地球規模の温暖化や生物多様性を改善するために、カバークロップの栽培をし、耕起を減らした方が良いということは理屈で分かっていても、自分の農場で何ができるかを考えた場合、今までうまくやってきた慣行の耕起を伴う農法を、リスクを冒してまで変えるメリットがどこにあるのかと考える人も多いのではないでしょうか。

 筆者が見聞きした減耕起や不耕起を実践している事例は、環境への強い思い入れがある人が多いようです。こういった先駆的人達は徐々に増えつつありますが、日本の農業全体に影響を及ぼすまでには至っていないようです。プラネタリーバウンダリーは地球規模の環境リスクを示していますが、現状の工業型農業の継続では、人類生存のリスクはますます増大するばかりです。

一歩踏み出すことが重要

 やってみたいけど何から取り組んでよいかがわからない人には、経営に大きな影響を及ぼさない程度の小面積で試験的にカバークロップの導入や耕起の減少に取り組むことが重要です。実際に自分の農場で土壌の健全性を高める効果を確認したうえで、経営的に環境対策を拡大するというのがおすすめです。Webサイトには不耕起栽培No-till farming)の情報が大量に存在していて、カバークロップ・不耕起栽培専門サイトや初心者向けの動画などもたくさんあります。最初は効果が出ず、収量の停滞や低下がみられる場合があるかもしれませんが、数年すれば効果が出てくるのが一般的なようです(先ほど示した図参照)。

 また、このような個別の対応も大事ですが、面的広がりを持った取り組みはもっと重要で、行政による技術面や資金面でのサポートが必要であると考えます。米国農務省(USDA)は、持続可能な農業技術を農家に広めるための研究と教育を行い、農政として不耕起栽培を推奨しています。「実践ガイド 生態学的土づくり」は、USDA国立食品農業研究所のSARE(持続可能な農業研究教育)で出版している実践的教育書です。 かけがえのない地球を守るために、農業ができることは何かをもっと考える必要があるのではないでしょうか。あなたも一緒に、どうしたら気候変動のリスクや生物多様性減少のリスクを減らせるかを考えてみませんか。

2024/11

特集 『進化するGAP 持続可能な農業』
◆ 世界のGAP先進地スペイン・アルメリア農業に学ぶ

日本の農業振興を考えるうえで、今、最も参考になるモデルの一つ「アルメリア農業」をつぶさに調査して、その結果を専門家が様々な角度から報告します。

調査「2024年11月9日-17日 第四回アルメリア農業交流ツアー」
報告「2025年2月20日-21日 GAPシンポジウムで調査報告会」

日本生産者GAP協会 教育・広報委員会

1 日米欧のGAPは2021年からGAPステージ3(持続可能な農業)へ

 2020年は、新型コロナウィルス感染症の世界的流行で人類が過去に経験していない事態に陥りましたが、同時に2020年には、食・農・環境に関する農業分野での大改革が世界的に提唱され、2024年現在は各国で様々な持続可能な農業(GAP)の政策が展開されています。

  EUは、環境再生型農業と食料システムの公平性を目指す「Farm to Fork Strategy(農場から食卓まで戦略)」を開始し、米国もまた「農業イノベーションアジェンダ」で、農業部門のカーボンフットプリント削減を宣言しています。

 これらに倣った日本は、「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)で、①化学農薬の使用量50%減少、②化学肥料の使用30%減少、③有機農業の農地25%に拡大という達成目標KPI(Key Performance Indicator)を掲げました。

 これで世界のGAPは第3ステージに移りました。生産性の向上と自然生態系の保全を両立させる農業を目指す環境再生型農業を標準として、各国の戦略は、輸出国においても同じことを実行していなければ、米欧への農産物の輸出は認めないという方向を示唆しています。

 世界の農業政策(農業者)に共通となったKPI①②③ですが、それらの環境に絡む政策や生産コストの高騰、農産物価格の低迷等に対して、EU加盟各国では農業者による抗議デモが噴出しています。 CNN(https://www.cnn.co.jp/world/35214889-3.html)

 デモは各国に広がっていますが、目的としては、農業改革の柱「環境再生農業」としての土壌の健康や生物多様性の促進のために行う作付け制限の義務などの施行開始を延ばすことなどを求めています。安価な外国産農産物の輸入に対しても不満の声が噴出しているようです。

 日本では農業者によるデモについて聞いたことがありません。環境再生農業のため土壌の健康(化学肥料削減)や生物多様性の促進(化学農薬削減)、そのための作付け制限(有機農業拡大)等の義務化がスケジュールされていないからでしょうか? いずれにしても、日本の農業が目指すべきみどり戦略のKPIは、いつから、どのようなことを、どれだけ行えば、達成できるのでしょうか?

 日本の農業関係者にとっては、過激な農民デモに関してよりは、環境再生農業(持続可能な農業)の指導内容や農業者の取り組み実態および社会的評価などについての情報を得ることが重要かと思います。

2 GAPステージ3(持続可能な農業)をリードするスペイン アルメリア

 日本生産者GAP協会では、そもそも地球環境の保全と消費者からの信頼を目指して策定された「GAP規範(適正農業規範)」と、規範に基づく「GAP(適正農業管理)」が、世界で最も進んでいる産地を探して歩いて、2004年にはヨーロッパ随一の夏野菜産地であるスペインのアルメリアにたどり着いていました。

 世界で一世を風靡したGLOBALG.A.P.農場認証制度においても、アルメリア地域ではそのスタート時から関わって、現在でも認証制度の普及率は世界ナンバーワンです。 「スペイン・アルメリア農業特集」 https://www.fagap.or.jp/publication/content/fagap-con-spain.html#link

 今年(2024年)は、コロナ禍で2019年11月以来中止していた『GAP先進地スペイン「アルメリア農業」交流ツアー』を再開しました。視察調査の成果は、ツアーに参加する農家、指導者、技術者、研究者の皆さんから、『GAPシンポジウム 2025年2月20日・21日』で報告・発表していただく予定です。

 EU共通農業政策で強力に推進されている「生産性向上と環境保全の両立を目指した農家指導」をつぶさに観てきます。

3 この時代に相応しい施設園芸を求めて

 日本の食料自給率(カロリーベース)は38%まで落ち込んでいますが、野菜の自給率(重量ベース)は80%といわれていますから、日本農業の持続可能性を研究する上でも野菜生産はとても重要な位置付けになります。

  スペイン南部のアンダルシア自治州の東部アルメリア県の地中海に面した沿岸地域には一面にビニールハウスが広がっています。

 アルメリア大学のペーニャ教授は、「アンダルシアは、アルメリアの温室のおかげで、農業食品輸出においてヨーロッパをリードする地域である。」さらに、「安定した雇用を生み出し、現在のような危機的状況においてもその強みを発揮し、現在のパンデミックのような複雑な状況においても国民への食糧供給を保証している」と指摘しています。

 社会的持続可能性という点では、同教授は、「アルメリア農業は、サンドブラスト、ソーラー温室、点滴灌漑、肥沃化、プラスチック栽培、生物学的防除などの技術革新に基づいて発展してきた」と指摘しています。

4 アルメリア農業の革新は小規模農家の農業協同組合活動から

 無加温の温室でトマト、キュウリ、ピーマン、ズッキーニ、イチゴなどを栽培し、その多くは家族農家による経営です。産地のとりまとめは農業協同組合を中心に、州や市役所および大学などの指導で、早くからIPMに取組み、生物的防除が圧倒的に普及しています。

 これまでの十数回にわたる"世界のGAP先進地スペイン・アルメリア農業の視察交流"で、私たちが確認してきた「農業協同組合が持続可能な社会経済発展において重要な役割を果たしてきた革新」の重要性については疑いの余地がありません。

 アルメリア農業産地は、世界で最も協同組合が集中している地域であり、小規模農家の農産物の市場アクセスを保証していることは間違いないことです。

5 時代の要求に応じたアルメリアの農業経営

 コロナ禍で交流できなかった4年間で、アルメリア農業はEUの「Farm to Fork Strategy(農場から食卓まで戦略)」で、環境保全農業と農産物輸出を中心とした流通システムが一段と進展しています。

  日本のみどり戦略においては「スマート農業」がキーワードになっていますが、アルメリア農業では、2019年の視察交流の段階で、すでに一般の家族農家がコンピューター管理の近代的な農業生産方式を取り入れた集団(農協の生産部会)となっていました。

 労働環境としては、収穫期の季節労働者として、1~3名程度の外国人を雇用する農家が多くありました。現在の日本も今、技術的にも経営的にも同じような環境になっていると思います。

 アルメリア県農業・漁業・食品省(MAPA)が発表したデータによると、「アルメリアにおける有機農業生産に割り当てられた面積は、2021年には前年比22%増加し、2010年以降の推移をみると、有機農業の表面積は倍増に近く、83.7%増となっている。」

6 消費者の需要に合わせた農業管理

 アルメリア県農業・畜産・漁業代表のアランサス・マルティン氏によると、「アルメリアの農家は、消費者の需要に合わせて農産物を生産しており、その意味で、残留農薬に関しては、"農業者自身が行っている偉大な仕事である"」と強調しています。

  「何年もの間、アルメリアの農産物商品に植物検疫上の警告が出ていないことは、他国・他産地との大きな違いです。 これらはすべて、①生物学的防除と②エコロジー農業の両方に対する農業セクターの指導のおかげであり、この2つはともに我々の農業の基本的な柱となっており、これが競争力を高めている。」

  アルメリアの農家は、「環境を尊重し持続可能な農業、品質と食の安全に配慮した農業に明確にコミットしています。なぜなら、より高品質で健康的な食品を求める市場の要求が、生物だけでなく生産方法にも及んでいるからです。」

  多くの農家が有機栽培を選択していることについて、アランサス・マルティン氏は、それは差別化の手段であるとし、「農産物の付加価値へのコミットメントが、現在のヨーロッパ市場をリードしている」と言っています。

  加えて、「現代のグローバル化社会における競争力と持続可能性の問題を考慮した企業の社会的責任(CSR)の概念は、有機農業生産であることと密接に関連しており、資源の持続可能な使用と環境保全に最高度の適合性を保証しています。」

2024/11


特集 『進化するGAP 持続可能な農業』
◆ ヨーロッパ随一の園芸産地アルメリアはスマートで持続可能な農業

田上隆一 日本生産者GAP協会理事長

1 アルメリア農業の衝撃

 スーパーマーケット業界が要求する農場認証「EUREPGAP」の件で、2003年にイタリアの南チロル地方を訪れ、農家の約50%が認証を取得していたことに驚いたのですが、世界で一番「GAPやGAP認証」が進んでいる産地はスペインのアルメリア県だと聞かされて、翌2004年にオランダの卸売業者の紹介で、スペインのアルメリア農業、特にエレヒド市の農家や農協を訪問しました。

 行ってみると日本では想像もできない農村風景で、露地野菜はなくて全てが施設野菜で、その多くは簡易ハウスかと思えるほどの平らな屋根のビニールハウスでした。道路から見える街並みは、農産物流通会社、温室や農業資材会社、生物資材会社、種苗会社、農協や卸売市場など、どれもこれも、農業・農産物に関連する建物・施設・看板などばかりです。

 この街の産業は「農業が核」で、農業に関わるあらゆる産業と、それを支える人間の集まり、その人たちの暮らしを支える衣食住に関わる企業、そして銀行や保険会社などもすべてが一つのまとまりとなって街を形成しています。この様子を「農業クラスター」と解説する論文があります。政治も経済も社会の全てが「農業を核」に構成されているようです。

 それから20年になりますが、この間に私は10回の訪問を繰り返し、また、アルメリアの関係者を日本に招聘・招待して交流を続けています。この度、2024年11月には私の11回目の訪問で、日本でアルメリア農業に関心を持つ人たちを誘って、4回目の「世界のGAP先進地スペイン アルメリア農業交流ツアー」を実施します。

アルメリア農業の温室(ビニールハウス)
エル・エヒドのビニールハウス群はプラスチックの海ともいわれています
アルメリアの温室は、近代的で独特で、管理や品質が保証された家族経営の農業です
引用:https://sembralia.com/blogs/blog/invernadero-almeria-plastico-industria

2 国連がモデル化した「小規模な家族経営の農場」と「統合的で生態学的な農業」

 日本ではほとんど知られていませんが、エレヒド市を中心とするアルメリア農業は、ヨーロッパ随一の夏野菜産地としてヨーロッパだけではなく世界的に注目されています。しかし、持続可能な農業が求められている現在、プラスチックに対する否定的な意味合いから、温室農業に対する否定的なイメージも伝わっており、環境保全農業の観点からも新たな注目を集めています。

 このアルメリア農業モデルは1960年ごろからと新しく、セメントブロックの上に置かれた木材柱の上にワイヤー・テンションと透明プラスチックを設置するシステムで、ビニールハウスのお手本としたベルギーの温室の3分の1のコストに抑えることに成功して、スペイン南東部のアルメリア県一帯に広まっています。  

 この温室が農業に革命を起こし、60年以上経った現在、国連は見倣うべき農業モデルとして推奨し、貿易と開発に関する報告書には、「小規模な家族経営の農場」と「統合的で生態学的な農業」のモデルとして盛り込んでいます。国連の取り組みは、食料安全保障、貧困削減、環境保護、生物多様性の保護など、多岐にわたる目標を持っています。

3 スマートで持続可能なアルメリア農業を見る5つの視点

 20年前のアルメリア農業の衝撃もさることながら、私が長きにわたって興味を持ち続け観察してきた理由は5つあります。

 一つ目はアルメリア農業が「持続可能な農業というGAP(適正農業管理)」に取り組んできたことです。訪問するたびに聞かされた農家への行政指導は、土、水、消費者を意識したサステナビリティと農業の信頼です。信頼の手段としてのGAP認証の取得率は世界一です。

  二つ目は、農業の担い手が小規模農家であることと、その農家を統括する協同組合の活動です。産地の核としての選果場を運営する農業協同組合は、組合員を取りまとめて農産物商品を消費者(マーケット)につなぐビジネスを展開しています。

  三つめは、組合員を束ねて農産物ビジネスを展開する農業協同組合を、行政に近い普及指導員が技術の専門家として支えていることです。「テクニコ」という農業技術の専門家が、「農業協同組合ビジネスのリソースである農家と農地・農場」をコントロールしています。

  四つ目は、農業DXを方向付けて具体的に指導している関連企業です。システムベンダーによる農業ERPの普及や、種苗・資材・機材などの研究開発を行う多くの関連企業と協同組合銀行などが活躍していることです。

  五つ目は、大学と農業行政機関です。アルメリア大学は、高度な農業研究とともに、行政と連携した実践的試験研究所の運営、そして地域農業を支えるテクニコの養成を幅広く実施して成果を上げています。

4 アルメリア農業はさらに進化している

 今回の「第四回 世界のGAP先進地スペイン アルメリア農業交流ツアー」は、アルメリア農業を見る5つの視点について、新たな角度から視察研修しようと考えています。2020年からの新型コロナウィルス感染症の世界的流行で訪問期間にブランクがあったこと。それと同時に2020年にEUは、環境再生型農業と食料システムの公平性を目指す「Farm to Fork Strategy(農場から食卓まで戦略)」を開始し、食・農・環境に関する農業分野での世界的な大改革が本格的に始まったということを踏まえることです。

 SDGsに代表される世界の価値観の転換に対して、アルメリア農業は世界に先駆けて技術革新と農業の社会的責任の体制整備などに取り組んでいます。2020年からの進化に照準を当てて、日本が取組むべき「みどりの食料システム戦略」への取り組み方向について大いに学んできたいと思います。

5 (視察前の基本情報の整理)

引用:https://sembralia.com/blogs/blog/invernadero-almeria-plastico-industria DeepLのMicrosoft Wordアドインで翻訳
アルメリア温室栽培の特徴 
 技術の向上と進化を経た現在、温室栽培の重要性は論を待たないが、その重要性は4つのポイントに基づいています。

1.  ハウス栽培は家族農業である。

 30,000ヘクタール以上の栽培面積を持つ温室栽培は、現在アルメリア州のGDPの13%に直接貢献している。さらに、取り扱い、販売、その他の関連産業を加えると、その割合はGDPの40%に達する。

 この広大な土地は、12,500以上の農場に分割されており、それぞれの平均面積は2.4ヘクタールである。ビニールハウスの広大な土地は、労働力の約30%が家族労働者であることと相まって、家族労働者と彼らが属する地域社会の経済発展に役立っている。

2.  選抜・育種中の野菜

 ビニールハウスで栽培される作物はすべて、継続的に品種改良が行われている。農家は、耐病性、生産性の向上、サイズや形の多様性、あるいは味の違いなどを備えた種子を求めている。

  アルメリア県には、温室に関連する国内外大手種苗会社の研究センターがいくつかある。また、アルメリアには、世界最大の農業多国籍企業の多くも立地しており、常に最新技術を伴う古典的な植物育種を通じて、農家により良い資材を提供している。

3. 総合的害虫管理

 統合的・生物学的害虫駆除(IPM)は、2019年に24,740ヘクタール以上の温室を持つアルメリアにおいて実現している。これは生物学的防除法で栽培されている最大の面積である。ピーマンの例でいえば、2019年に栽培された11,500haの100%がこの技術を用いて栽培された。

  害虫の予防と防除のための補助製品(化学合成農薬)の使用は、化学残留物に関してますます厳しく制限されている品質基準を遵守するための基本的な柱のひとつである。この種の害虫防除にセクターの全メンバーが参加するようになった背景には、継続的な研修と、研究とコミュニケーションへの絶え間ない投資がある。その結果、この防除は温室による園芸生産の基本的な柱となっている。

4. 安全で認証された高品質の生産

アルメリアの生産者の90%以上が、認証システム(UNE155,000、GRASP、ISO9000、GLOBALG.A.P.など)に準拠しています。GLOBALG.A.P.は、世界の多くの生産者が参加する流通・認証プロトコルであり、ALDI、SPAR、LIDL、TESCO、El Corte Ingl?sなどの大手チェーンが認める基準であるため、最低基準として重要である。

  アルメリアの温室では最大残留規準(MRL)の規制を遵守することを厳格に管理している。この規制は、EFSA(欧州食品安全機関)が2006年の残留農薬危機の後に制定したもので、有効物質の使用が消費者にとって安全であることを保証するものである。

  MRLは残留濃度の法的上限値である。「食品中の残留農薬に関する欧州連合報告書」と題された、2017年に対応する2019年のEFSA報告書では、2,767サンプルのうち97%に農薬が含まれていないことが明らかにされている。このデータはすべて、スペインが無農薬の青果物の生産と販売における欧州のベンチマークのひとつであることを示している。なお、サンプルの66.6%は必要な検出限界以下(<LOD)であった。

< LODLOD<> MRL>MRL
スペイン 66.6%30.3%3.0%
ドイツ41,3%54,3%4,2%
フランス63.2%32.1%4.7%
イタリア65.0%32.5%2.5%
オランダ32.4%58.2%9.5%
出典:https://www.efsa.europa.eu/en/interactive_pages/Pesticides_report_2017

 環境と最終消費者を尊重した「持続可能な農業生産システム」に対する農家のコミットメントと、農薬・肥料メーカーが、自社製品について継続的な改善と研究を行っていることが、スペインの温室栽培農業を世界のフードチェーンにおけるベンチマークとして位置づける結果につながっている。

2024/11

《特集 『進化するGAP 持続可能な農業』》
◆ 『2024年度GAPシンポジウム』開催予告

世界のGAP先進地スペイン「アルメリア農業」交流ツアー報告

 生産性向上と環境保全の両立を目指し、家族経営農家に対するGAP指導で、欧州随一の野菜産地となったアルメリア農業について、その内容をつぶさに調査し、専門家が様々な角度から報告し、日本農業の発展について議論を深めます。


開催概要


名称
2024年度 GAPシンポジウム GAP 持続可能な農業
テーマ
『世界のGAP先進地スペイン・アルメリア農業に学ぶ』
-ヨーロッパ随一の園芸産地はスマートで持続可能-
日時
2024年2月20日(木)受付 12:00 ~ 開始 13:00~17:00
     21日(金)受付 9:15 ~ 開始 9:45~17:00
会場
【ハイブリッド開催】
オンライン(Zoomウェビナー) ・ つくば研究支援センター(茨城県つくば市)
※開催後に参加者限定で各講演のビデオをストリーミング配信予定
参加費
(個人)主催・共催の会員:\7,500、一般:\11,250、大学生: \1,500、高校生:無料
(団体)農学系大学・専修学校・農業高校の授業として聴講:\11,250
*配布(送付)資料: GAPシンポジウム講演要旨
主催
一般社団法人日本生産者GAP協会
対象者
農業試験研究者、農業普及関係者、大学・大学校、農業高校、農業生産者、農業法人、 農協、出荷組合、産直団体、農林行政機関、卸売市場、卸売会社、農産加工会社、 農産物流通・小売企業、外食企業、消費者、調査・検査・認証機関、研究機関、その他
事務局
一般社団法人日本生産者GAP協会 教育・広報委員会、株式会社AGIC大会事務局
https://fagap.or.jp/seminarsymposium/symp2024/index.html

プログラム

報告と討論の予定  「みどりの食料システム戦略」 ベンチマーク

  • 生産性向上と環境保全の両立を目指して進歩・発展するアルメリア農業
  • ヨーロッパ農業をリードするアルメリアの施設園芸とフードチェーン
  • 普及指導員と農業協同組合による営農指導と農業の社会的責任
  • 環境を尊重し、農産物の品質と食の安全に徹底した農協と農家
  • 施設園芸技術イノベーションとIPM・オーガニック 選果場を核としたERP(Enterprise Resource Planning)システム

世界のGAP先進地スペイン「アルメリア農業」交流ツアー Vol.4

日本農業の再生 GAP戦略を考える 地域農業再興のヒントがいっぱい!

 スペイン南東部のアルメリアは、ヨーロッパ最大の夏野菜生産基地で、GAP認証割合100%の先進地です。日本生産者GAP協会が2004年から親交を深めてきたアルメリアの農業関係者を訪ね、稀にみる地域農業の発展を遂げた「農業クラスター」の実態、特に農協による生産者指導と農産物販売のポイント及び農業関連産業の発展について学びます。

 地域農業を支える行政機関や大学の支援、地域経済の柱である農家と農協や農業法人などの生産・出荷・販売の現場を視察し、それぞれのキーパーソンと意見交換します。また、生態学的制御の生産技術と、ERPシステムによるマーケティングチャネルの改善、それらを可能にした小規模農家の協同化に学び、日本農業の再興を考えるGAP研修ツアーです。

・スペインは、国際規格のGAP認証農家の数が世界で一番多く、農協がリードする園芸産地です
・アルメリアは、持続可能な農業のGAPで差別化し、農協の農産物輸出額は大幅に増えています
・エルエヒド市は、行政支援の農業クラスターで、地域人口が大幅に増えている農業振興地域です
このツアーで、GAPは難しいと思っている日本人の誤解が解消されます
このツアーで、GAPコントロールが市場支配力を持つと認識します
このツアーで、GAPが地域農業振興の切札であると確信します
ツアーの主な交流内容
訪問先特徴訪問先特徴
イスパテック選果場・農協サプライヤーのための統合的な情報システム「ERP Agro]コーエクスパル農業協同組合をリードする協会 農業者の権利とビジネス戦略
テクノバ財団温室、生産、ポストハーベスト、バイオテクノロジーなどの技術開発・開発機関アグロポニエンテ・生産・販売・マーケティング・生産者3800名以上
ウニカ農協連合会 青果物を中心としたマーケティング・販売を行う共同組織ラパルマ・農業協同組合 生産者700名、日本のトマトブランド「アメーラトマト」も
カシ・農業協同組合 1944年設立、生産者3000名以上アルメリア大学アルメリアの農業クラスター 園芸技術と地域農業振興について
ビオサボール・有機農産物の生産法人・2008年設立 300ha以上の温室エル・エヒド市役所日本生産者GAP協会・アルメリアの農業フォーラム 情報交流会
その他・家族経営農家の温室
・企業経営の温室
その他・農業におけるプラスチック廃棄物管理・リサイクル企業

2024/11

『世界のGAPは環境負荷低減型農業から環境再生型農業へ』
連載(2) GAPの本質と農場認証の意味を理解する

北海道地域農業研究所 研究報告講演(2)
令和五年度農業総合研修会(2024年2月28日)JA北農ビル

田上隆一 一般社団法人日本生産者GAP協会 理事長

3 持続可能な農業政策と世界のGAPステージ「3」

地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)と農業

 地球温暖化の原因と言われる温室効果ガスGHGは、農林業や土地利用からも大量に排出されています。GHGは二酸化炭素、一酸化二窒素、メタンなどです。2015年のIPCCレポートでは人為起源GHG排出量のうちの1/4は農業関係が原因であると言われています。

 プラネタリー・バウンダリーは2009年に提唱されていますが、2023年版では驚くべき情報がしめされています。地球上で人間が安全に生存できる限界というものを、カテゴリーごとに分けて、新規化学物質や生物圏の一体性、生物地球化学的循環などは元の安全な状態には戻れない、つまり不可逆的なところまで来ているという赤色で示されているのです。

 BAPに対するGAP対策である最初のテーマ(GAPステージ1)の環境保全、つまり環境負荷低減型農業というレベルでは、もう戻れないという不可逆的なリスク状態であるということです。

 とりわけ窒素NとリンPの生物地球化学的循環は人類にとっての危機的状態になっていて、これはプラネタリー・バウンダリーが提唱された最初からそうなっていて、その他のカテゴリーにも人類の食を担う農業は少なからず関わっているということです。

 2022年末に世界の人口が80億人に達したと発表されました。私が生まれた頃の1950年は25億人でした。子供心に立派な農家になろうと思っていたその頃からわずか70年程度で人間が3.2倍になっています。我が家はただ今6人家族です。現在、耕地面積は増えていないのに家族が19人になったら食べさせていけるのか?住むところは?学校は?いったいお金はどれだけかかるか!家からはどれだけのゴミがでるか!そう思っただけでぞっとします。

エシカル消費

  そして農業由来の環境破壊への対策は、食料生産を仕事としている農家の問題としてではなく、すべての消費者、すべての地球人が協力しないといけないと気づかされます。

 2015年に国連のキャンペーンSDGsが生まれました。SDGsでは、各国政府の政策や規制でできるものではなく、すべての人の「気づき」によって自身の消費行動を変える、消費の動向を、購買の行動変容を起こす必要があると提唱しています。

 目標12「つくる責任、つかう責任」は、持続可能な消費と生産のパターンを確保することが目標です。環境や人権に対して十分に配慮された商品やサービスを選択し購入する倫理的な消費が「エシカル消費」です。安ければなんでもいいということではありません。このことが世界的な動きになって、例えば、メーカーが人権を無視した労働環境であることが分かったら不買運動を起こせば社会が変えられるということなどですね。このような流れを起こす可能性を持ったエシカル消費のインパクトは大変大きいと思います。

持続可能な農業・食料戦略「公平という国際戦略」

 国際戦略としての持続可能な農業についての政策を整理してみますと、欧米日のいずれもSDGsに配慮したものといえます。

 EUの戦略を見ると、SDGsを全面的に受け入れ、EUの政策そのものは「グリーンディール」です。グリーンディールの一丁目一番地は「ファームtoフォーク」です。ファームtoフォークとは、農場から食卓までの食品生産、流通、消費の各段階で自然環境への影響を最小化し、健康で持続可能な食品供給体制を実現しようという政策です。具体的には、農薬削減、有機農業促進、エネルギー効率向上、食品ロス削減、動物福祉改善などを掲げ、その数値目標として2030年までに、化学農薬の使用を5割減少させる、化学肥料は少なくとも2割減少、そして有機農業を耕地面積の25%に到達、と20200年5月に発表しています。

  農業生産の40%増加と環境フットプリント50%削減を目標とするアメリカでは、達成目標年が20500年ですが、目指すべき達成目標は同じような内容になっています。

  日本の戦略はといえば、その達成目標がEU資料のコピーアンドペーストといえるほど酷似しているじゃありませんか!

 米欧の戦略発表があってからわずか1年後に策定された「みどりの食料システム戦略」が、日本の農業関係者が熟考して策定した日本農業の知恵の結晶とは思えません。EU加盟国には農民の激しいデモが行われているところもありますが、日本では農業者や農業者団体との十分な話し合いはあったのでしょうか?政治や社会的に大問題になったという記憶はありません。結果的に政策に従うにしても、それならどうやるのかということは、自分のこととして本気で考えなければならないと思います。

  その際に農業の新たな概念を考える重要な情報があります。持続可能な開発目標「SDGs」と同じ2015年に国連で策定された「世界土壌憲章」で、「適切な土壌管理は食料安全保障、気候変動への適用と緩和、生態系サービス、貧困撲滅及び持続的な発展に寄与するものである」という宣言です。土壌資源の科学的評価を行った「世界土壌資源報告」では、世界中の土壌を相当細かに調べて、その実態分析と今後どうあるべきかの提言をしています。それは、これからの適切な農業(GAP)は、土壌の修復改善をしながら自然環境の回復につなげることを目指す環境再生型農業であるという結論です。

農業のパラダイムシフト「みどりの食料システム戦略」

 我が国も食料農業農村基本法の見直しをせざるを得ないということで、昨日(2024年2月27日)、見直し案が閣議決定したというニュースがありましたが、生産現場の声は伝わっているのでしょうか?充分な議論をせずに通ってしまい実現出来ないものになったら、今度は30年3周遅れになってしまうんじゃないかと心配になります。いずれにしても、「みどりの食料システム戦略」は世界のGAPステージに合わせて動き出したのですから、関係者は取り組まざるを得ない。しかしそれが横道に逸れないかどうか、私たちは様々な角度から意見を言っていかなければいけないと思います。

 その方向は、「自然の力を最大限に活用して、土壌や作物の生命力を引き出す農業」に向かっていくことです。虫が出たから農薬をやる、栄養が足りないから肥料をやる、水が足りないから潅水するという対処療法の農法ではなく、根本的な解決策に向かう新たな農業です。20世紀後半からの60年間に、飛躍的に農業生産を挙げてきた「工業的農業」から脱却することですね。土壌そのものの活力、作物のもつ本来的な生命力が十分に発揮できるような循環というものが、自然の力を最大限に活用する、環境再生型農業だと思うのです。

世界の適正農業(GAP)ステージの3段階

 激動する時代背景の中で人間の価値観や仕事や暮らしの概念も変わりつつあり、GAPの定義も一言で片付けられるようなものではなくなってきました。人口増加とそれに付随した農業革命、グローバル経済と多様な社会情勢などによって、世界で期待される農業や農法(GAP)を、段階的にステージ1、ステージ2、ステージの3段階に分けるとGAPが理解しやすくなります。

 GAP以前の時代はステージゼロ。農業の近代化による生産性向上で、工業的農業が「良い農業」と賞賛されていましたが、予想もしなかった自然環境の汚染が始まった時代です。そのためヨーロッパではEU共通農業政策として環境保全型農業が本格的に動き出しています。硝酸塩指令によるアンモニア規制のほか、植物保護指令では、農薬による人や環境への悪影響を回避するための規制を厳しくしたということです。

GAPステージ1 環境保全型農業は農民のマナー(公共財をメンテナンスする農民)

 世界のトレンドとしては、1980年代と90年代が「政策としての環境保全型農業」ステージ1です。EUの環境保全型農業は、「市場では守られない公共財(水・土・空気)のメンテナンスをしている農家が行うGAP(持続可能な農業)によって達成されるものです」。

 この考え方が「GAP」の基本であり本質です。日本においてもその理解が重要です。

  持続可能な農業に努めたからといって、農産物が高く売れるわけではありません。市場では守られないということは、需要供給で決まる価格(経済原則)に何かを乗せるということはできないということです。もともと誰もが無償で利用できる公共財ですが、持続可能な農業(GAP)を行っている農民が、そのメンテナンスをしている当事者であるという前提です。この農民の努力が、農産物の取引では報われない、つまり農産物の価格には載せられないから、そこには公金を使います。これがEUのクロスコンプライアンスです。

  この時代、ドイツなどでは、「GAPは農民のマナーである」と言われていました。マナーは相手を思いやる心であり、その心で行う必要な作法です。それができていなかったら、一連の農業補助金を受けられないからやるのです。やっているから補助金をもらっている。そしてみんなが守っているからマナーになるということです。

GAPステージ2 農場認証制度がビジネスになった

 このマナーを守らないような人がいたとしたら、流通業界が、そんな農家とは付き合わない、取り引きしないということを言い出してもおかしくなかったかもしれません。2000年になると、グローバル経済に必要だと言われる農場保証制度が始まりました。GAPステージ2ということです。

 経済のグローバル化で、農産物サプライチェーン全体の信頼(保証)確保が必要な時代になりました。消費者に対してサプライチェーン全体の信頼を得るためには、第一次サプライヤーである農協の信頼が重要になるんです。自らが販売者となる農業企業は別ですが、多くの農家に対しては農協が各農家の農場管理の内部統制を効かせていなければなりません。農家を組織する団体が個別農家の管理ができているかどうか、買い手側が監査する制度が農場認証制度です。一定の契約の下で農家とその組織を監査して農場信頼を得て取引開始になるということです。

 これを、日本ではGAP認証といっていますが、ヨーロッパでは農場保証(ファーム・アシェアランス)と言います。農場保証のための農場認証監査という意味です。事実上のスタンダードになっているGLOBALG.A.P.制度では、インテグレーテド・ファーム・アシュアランス(IFA)、総合的な農場保証制度と言っています。この段階でGAP農場認証は流通ビジネスとしての農場認証監査であり、制度そのものがビジネスとして一世風靡した段階がGAPステージ2ということです。

日本のGAPはステージ2から始まった食品安全と農場認証

 日本でGAPが話題になったのは、1998年からイギリスに農産物を輸出していた青森県の農家に、2002年、農場認証を取得するように要請があって、2003年にチャレンジし、2004年に認証を取得した、というところからだろうと思います。

 日本初の農場認証取得の経験から、私は、日本の農家が世界に打って出るためにはGAPであるべきと考え、「JGAPという認証制度」を策定し、農場認証(GAP認証)事業を開始しました。そして、マスメディアの影響もあって、日本では、それ(農場認証)が「GAP」であると考えられることとなり、農業由来の環境負荷を削減、解消することを本旨とする本来の適正農業(GAP)からは概念がずれることとなってしまったのです。その上、農林水産省の「食品安全GAP」という政策で、日本のGAP概念は、消費者のために食品安全に努めることであり、後に、環境保全にも努める農家のあたりまえの行為であり、認証を取得して経営改善にも役立てる、という考え方が定着してしまったのです。

生産・販売する事業者の信頼度を確認する農場監査

 グローバル経済時代のサプライチェーンでは、チェーン全体の信頼が欠かせません。しかし、第一サプライヤーとして自ら農産物を販売する農家にも、組合員の農産物を商品化して販売する農協にも、サプライヤーとしての自覚が希薄なところがあるんですね。単なる出荷作業ではなく、売って(売買契約)いるのですから、立派なサプライヤーですよね。

  農産物の買い手側は、生産・販売する事業者の信頼度を確認するために第三者による農場認証を要求しています。農産物を輸入することになれば、生産地の事情が見え難くなりますから、農場認証ビジネスはますます盛んになってきまして、2000年代2010年代には、ヨーロッパ、アメリカに輸出する産地で一気に広まりました。その時期に、EUでは先ほども触れたように、域内に農産物を輸出する国にもHACCPを義務化し、さらに、EU政策に合わせて、民間ではスーパーマーケットグループがGLOBALG.A.P.(当時の名称はEUREPGAP)の認証取得を2005年から強制したという経過があります。

  日本では2000年に食料・農業・農村基本法が施行され、生産性向上オンリーのこれまでの農業基本法ではなく、環境保全型農業という政策目標をここで打ち出したということですが、それらの環境負荷低減の実行を「GAP」とは言っていないのです。GAPは、流通ビジネスの農場認証監査のことであり、それに向けた農業生産工程管理であると定義しています。そのため一般的に、生産工程のチェックリストと農場審査基準を「GAP」と呼ぶことが多くなっています。

  「このGAPを実行してください!」といって、審査基準を出されたら、農家は幻滅するし嫌悪します。そうではなくて、農業者として今何が問題なのか。様々な課題があればそれを解決していくために、私たちは何をすべきなのか、農業の社会的責任を果たすためや消費者の真の信頼を受けるためにどうするのかというテーマを追求したいはずなのです。結局、GAPステージ1を理解することなく、GAPステージ2のみをGAPだと勘違いしている日本は、世界のGAPステージから周回遅れ、次を考えたら2周遅れかもしれません。

GAPステージ3 国際戦略としての持続可能な農業

 そして2021年に世界のGAPはステージ3に移りました。これは、「環境に優しく公平で健康的な食料システム国際戦略」が始まったということによります。2000年以降、グローバル化が大きく進展しましたが、今般のウクライナと中東の戦争ではグローバルサプライチェーンや物流が混乱し、各国の食料安全保障問題も複雑になってきており、その中でも農業と環境問題は大きく問われています。ここでは国際戦略としての持続可能な農業というものを確立しなければならない。生産性の向上と自然生態系の保全を両立させる農業を目指す。これを環境再生化農業で実現するということです。

 ここでいう「環境に優しく公平」という意味は、例えばEU加盟国の農民がマナーとして、実際には厳しい環境規制の中で実践しているGAPですが、輸出国でも同じことを実行していなければ、EUへの農産物の輸出は認めませんという意味です。

  現状の日本では、輸出する時にはGLOBALG.A.P.認証が必要です、と言うばかりで、日本に入って来る輸入農産物に対してのGAP要件を出すことはできていません。これでは日本農業を守れないわけです。世界的には、ヨーロッパ農業を守る!アメリカ農業を守る!ために環境保護や人権に関する標準化という国際戦略が展開されている中で、どうやって日本の農業と農家を守っていくのか、GAPステージ3において、この公平というところが極めて重要な課題になると思います。

4 GAP((適正農業)とGAP認証(農場保証)

コンプライアンス農業とGAPのアウトカム(成果)

 GAPステージ1は純粋に農業由来の環境問題に対する政策の時代で、GAPはコンプライアンス農業としてEU農民のマナーと言われるまでになった。その段階で、今度は、農産物の流通段階でGAPであることや食品衛生管理等が、特にEUへの輸入農産物に強く求められました。それらを買い手側からの取引要件として受け入れた各国の生産地は、EU・アメリカへの輸出対策として農場保証制度に取組んだ。これがGAPステージ2です。これからも農産物の第三者認証は続くでしょう。しかし、同時に各国政府が環境保全政策として生産段階に要求しているGAPのアウトカム(GAPの成果)が問われていくことになるでしょう。そのことの中身を整理しておかねばならない。つまり「GAPとGAP認証」の意味と内容についてです。

  「GAP(Good Agricultural Practice)は適正な農業」です。「GAP認証(Farm Assurance)は農場保証」です。このことの意味と内容をしっかりと理解しておかないと間違った決断をしてしまう恐れがあります。イギリスのDEFRA(農林水産省)では、EU共通農業政策のクロスコンプライアンスで補助金を出していました。その担当者の話によると、環境配慮要件を遵守していれば補助金を支払います。したがって農家は、GAPを環境保全型農業であると理解しており、補助金を得るために守らなければならないという認識があって、ほとんどの農家が実践しいていますというのが政府の見解です。

 それで、GAPに関する質問として、日本のGAP認証について尋ねると「あなたが言っているのは、GAPではなく、それはファームアシュアランスと言います。」と直されました。ファームアシュアランスとは農場保証の意味です。それはスーパーマーケット、あるいは食品工場の独自の第一次生産者に対する要求事項で、農産物仕入れの要件として実施されているものです。

各スーパーの取引要件

 私がAGICでシステムサポートしていた青森の農家が1998年からイギリスにリンゴを輸出していたのですが、2002年にEWTという卸売業者からEメールが来て、「2005年1月1日までに欧州小売業農産物部会(EUREP)の農場認証を取得しないと取引を停止せざるを得ません」と一方的に通告されました。そのため、2003年からヨーロッパ各国を回って調査をして、2005年のEUREPGAP認証世界会議で「JGAP農場認証制度」を宣言したのですが、その当初は、私もそれがGAPと思っていたのですが、イギリスの政府や農協関係者から、「認証制度はGAPではありません、ファームアシュアランスです。」と言われて、なるほどと得心したのです。

  グローバルGAPの基本文書には、それがGAPであると書かれたものはありません。グローバルGAPという名称は農場評価のスキーム名で、認証基準となる文書は「インテグレーテッド・ファーム・アシュアランス(IFA)(総合的な農場保証)」です。つまり、農場保証のために、GAPであるだけじゃなくて、農産物供給者として信頼できるか、ということが問われているということです。そのため、信頼のための確認要件(検査項目)にはスーパーマーケットによる違いがあり、各社が独自にやっています。特に有名な規準にTESCOのネイチャーズチョイスがあります。取引の多くは産地指定、契約栽培ですから、買い手側の要件を満たしてもらう産地指導をしているというわけです。

  それ以外に第三者認証として「GLOBAL G.A.P認証」がありますが、自社規準を適用しにくい産地、特に輸入農産物に対しては最低でも、認証を取得していなければ、まず商談に乗りませんということです。他に、イギリスに限っては「RED TRACTOR(レッドトラクター)認証」があります。NFU(ナショナルファーマーズユニオン)という農業団体がオーナーの評価制度です。イギリスの農畜産物の生産物全体の8割から9割がこの認証を取得しています。ロンドンオリンピックでは、持続可能な調達食品として指定され、イギリスでの国内供給農産物はすべてレッドトラクターで賄われました。輸入品にはGLOBALG.A.P.認証が求められたそうです。

GAPの歴史と農場保証

 GAPの歴史を、環境負荷低減型農業の政策と、生産農家保証の認証制度という視点で整理してみましょう。イギリスの農林水産省からは、前者は適正農業(GAP)グッド・アグリカルチュラル・プラクティス、後者はGAP認証(IFA)インテグレイテド・ファーム・アシュアランスで、そもそも名前が違うし、目的も異なる、と教わりました。整理しますとGAPは、GAPステージ1の段階で作られた概念「グッド・アグリカルチュアル・プラクティス(適切な農業の実践)」で、環境保全型農業を指すものです。ヨーロッパでは、グッド・ファーミング・プラクティスという言い方もされ、硝酸塩による土壌・水質の汚染や、化学農薬による生態系汚染などを避けるための農法を実践することです。GAPは事実上義務化され、その実現のために適正農業の必要性や目標達成のための具体的な農法などが示された適正農業規範(Code of Good Agricultural Practice)が出版されました。

  クロスコンプライアンス制度で事実上の農家の義務となったGAPが農家のマナーになったところで、スーパーなどの農産物の買い手側がHACCPなど食品安全管理を加えた農場の監査基準を使って自社の仕入れ基準としました。それから、EU加盟国以外からの輸入農産物が多くなった2000年以降、グローバルに標準化されたGAP認証基準が出来ました。最初の認証は、私がヨーロッパのGAP調査依頼、交流しているところのスペインの野菜農家です。彼らは「やらされた」といい、相当、苦々しく思ったそうですが、今では、これは「ビジネスだと思って徹底してやっている」、取得して「世界の上位をいく」という話をしています。そういう事があって世界のマーケットに農場を保証するファームアシュアランス制度が世界に定着しました。これがGAPステージ2です。EUREPが始めた農場認証ですが、そのグローバルGAP事務局長のクリスチャン・ムーラー氏はその後アメリカに進出し、そして、GFSI(世界食品安全イニシアチブ)との協定にも取り組んで現在の流れになったと聞いています。

生産者に市場要件を伝え、バイヤーに保証するIFA(総合農場保証)

 ホームページで公開されているGLOBALG.A.P.バージョン6の青果物の認証基準正規版では、自らの制度を「一次生産レベルにおける責任ある農場実践のための世界基準である」と表現しています。つまり農場管理者の社会的責任の世界基準であるということです。さらに、「業界が業界のために開発した青果物向け総合農場保証(IFA)は、生産者に市場要求事項を明確にし、農場レベルの運営に対する長期的で総合的なアプローチを促進します」と。制度を開始した当初の規準EUREPGAPバージョン2(2002年)では、「世界のスーパーマーケットが農業生産者に対する最低限の要件です」と書いてありますが、本質的に内容は変わっていませんね。その20年の歴史と、現在ではGFSIの承認を得ていること、国連のグローバルコンパクト(持続可能な成長を目指す10原則を持つ)とSDGsにも合致していることを強調しています。

 この流れは変わらないので、私たちはこのファームアシュアランスをどのように位置づけるのかが重要です。世界的な環境問題以外では、国内における農業信頼の課題や輸入農産物への対抗策としての問題があります。今後、GAP認証が社会的にどのような意味合いのものになっていくかということを考えてみましょう。

 このスライドがVer6基準の章立てです。文書管理とか組織的な計画とか、要員管理及び教育訓練、委託業務、ここまでが経営管理です、サプライヤー及び在庫管理、トレーサビリティ、マスバランス、リコールと回収、苦情、不適合品、試験場検査というのは、流通販売の管理や検証です。

  設備や機器の安全管理と安全宣言など、フードディフェンスや食品偽装の問題対策を取っているか、それからロゴ使用、認証制度のステータスについて、次に食品衛生の管理と作業者の健康および福祉ということを言っています。サイト管理というのは、農場・生産場所の管理を適切にやっているかです。

  全部で33項目ですが、最後の「収穫後の取り扱い」を除く、次からの11項目は、環境保護に関わる事項です。生物多様性と生息地、エネルギー効率、温室効果ガスと気候変動、廃棄物の管理、種苗・遺伝子組み換え問題、土壌及び培地管理、肥料及びバイオスティミュラント、水管理、総合的病害虫管理、農薬及び特定防除資材、というところです。

  農産物の販売者としての農場管理者責任を問う項目が多く、その中に食品取り扱いの衛生管理が含まれており、農業に関しては、そのほとんど、全体の三分の一は、地球環境の保護に関する課題、農業者の責務であることが分かります。こうしてみると、GAPステージ3の農場認証は、農業者に対する企業の社会的責任(CSR)の要求だとも言えます。

グローバル食品企業による食品安全管理の承認

 もう一つの流れとして世界のグローバル食品企業で構成されているGFSIが、世界に様々な形で存在する食品企業向けの食品安全評価基準を標準化したいということで、認証スキームの同等性確認作業を始めたことがあります。

  その目的として、加盟企業が食品安全に関するリスクを軽減すること、および食品安全の管理業務を効率化し、コスト効率を高めることなどを掲げています。

  GFSIで承認された食品安全管理認証制度は、現在13スキームあるようです。そのうち農業に関わりがある制度は6スキームで、他はGMPやHACCPなどです。農畜産の第一次生産業、食品の取扱い業、食品加工業などそれぞれの段階での食品安全マネジメントの要求事項についてGFSIとの同等性を確認して、ベンチマーキングができたスキームを承認して、加盟企業に採用を推奨するというものです。

  GFSIは食品安全管理のための組織ですから、GAPに関しては高いレベル(GAPステージ3)の要求水準だという保証はないと思います。

自主的実践か従属的実践か

 さて、GAPとGAP認証の概念についてのまとめということですが、GAPというのは、農家が行っていくまとも(適正)な行いのこと。そのまともなことの具体的な内容は時代の経過によって変わってきました。環境への負荷を低減する農法から、農法で自然が再生する農業に価値観が転換すれば、そのようにすること、していること、したこと、これらがGAPです。

 そして、それをなぜ行うのか、どうしたらできるのかなどの指導を含んだガイドがGAP規範です。GAP規範は、適正農業のガイドブック(指導書)であり、認証検査のチェックリストではないのです。そしてチェックリストは適正農業の指導書ではなく、GAP監査の基準書です。

  表の上の「GAPとGAP規範」は、「自主的実践とそのための実践規範」です。下の「GAP認証とGAP規準」は、「従属的評価とその際の規準」です。英語で「規則にコンプライアンス(従属)する」と表現しています。この規準に従っていることが確認されれば、農場認証されて取引を継続することが可能になるということです。日本では、あちこちで様々なチェックリストが作成され、それをGAPと称している場合がりますが、GAPとGAP認証の関係性を正しく理解する必要があります。

次号に続く

2024/11

株式会社Citrus 株式会社Citrusの農場経営実践(連載52回)
~有田川バイオマス発電所と農業連携は可能か~

佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役

 この話は本誌74号の連載「株式会社Citrusの農場経営実践(46)」で紹介したその後の経過である。弊社の近くでバイオマス発電所が稼働し、そこで発生する副産物のチャー(バイオ炭)を温州みかん園の土壌に埋設して温州みかん樹の生育や果実品質向上の効果があるのかという簡易な実証試験をおこなった。有田川バイオマス発電所を運営するシン・エナジー株式会社(神戸市)から結果はどうだったかと問い合わせがあった。弊社の試験では温州みかん園の改植時に植え穴に2リッターから3リッターのチャーを投入してその後の生育を視るということだった。問い合わせに対しては弊社として「土壌の保水性向上に期待したが、殆ど効果が無かった」と伝えた。今年の夏は干ばつで苗木のかん水を数回おこなったが、試験区と対照区の苗木の生育に違いは見られなかった。干ばつ時の土壌の保水性に向上は無かったと考えられる。

 2年前に弊社がチャー投入したとのニュースで、柿農家やトマトの施設栽培農家からの問い合わせがあり、チャー引き取りのお世話をしたが、今年リピーターは無かった。聞いてみると「土壌への埋設による顕著な効果はなかった。ただ、パウダー状のチャーの取り扱いや施用には苦労した」との報告を受けていた。弊社もチャーの取り扱いに苦労したことはよくわかっていたので同様の課題であることをシン・エナジー株式会社に伝えた。

  その後、バイオマス発電所はチャーに水を混入してパウダー状を少し顆粒に近づけたといってきたが、それでも取り扱いは容易になっていなかった。そこでこの話は終わったかと思ったが、今年の9月に入りシン・エナジー株式会社からチャーの施用を少し容易にするための加工技術にめどが立ったと連絡がはいり、炭素クレジット(J-クレジット制度)を農家で活用できる仕組み作りへの協力依頼があった。

  バイオマス発電所からのバイオ炭とJクレジット制度の仕組みの説明によると、「日本の農家では古くから粉炭を農地に撒き、土壌改良材として農作物の生育や連作障害防止に利用してきた。」バイオ炭を農地に埋設した場合、「バイオ炭を構成する炭素Cの結合は強固なので土壌の微生物によって分解されにくい性質を持っていて、地中に長年(100年以上数千年)にわたって残る」ということで、「土壌改良材として農地に撒く(貯留する)バイオ炭を、J-クレジット制度では大気中CO2を削減する重要な方策として認めることになった」との説明だった。

 しかし、弊社の試験結果から、バイオ炭に興味を持つ農家グループ団をまとめることは困難だと一時は断ったが、「しろにし:有田川町移住定住推進拠点」が世話人となり有田川町内の農家の若者を15人ほど集めるから出席して欲しいと依頼があり、10月18日にバイオマス発電所の近くのレストランに集合した。そこには炭施用の研究家や県庁幹部のOBも出席していた。2年前にもこのような集まりがあり興味をもった農家がバイオ炭の提供を受け試験施用したが、その後結果についての話し合いがもたれなかった。そこで弊社が、今回の集りを機会に気楽とりくむバイオ炭活用グループを作らないかと提案してみた。その場では同意を得るまでの詰めはしなかったが、この会を企画した「しろにし」からは、面白い提案だから、弊社が代表になってもらえるのならグループ化を進めるとなったので同意をして会を終えた。

 後に、バオマス発電所とシン・エナジー株式会社で、有田川町におけるJクレジット制度の仕組みを構築していく運びになったと。「しろにし」から報告があった。この話が成功すれば弊社の地域貢献及び世界貢献になるのではと考えている。しかし、反面この看板(図1)に掲げている事業が、妥当な理論から始まっていたかが疑問である。

図1 農業でのチャーの利用計画(現状では進んでいない)
図2 チャー(バイオ炭)はパウダー状で扱いにくい。
図3 現状のバイオ炭の引き取り現場(これでは農家での扱いに苦労する)

  J-クレジット制度の詳細はHP<https://biochar.jp/j-credit/>で(農地に撒く土壌改良材の炭がCO2削減の炭素クレジットに認められます!)を参考にしてください。

2024/11