株式会社Citrusの農場経営実践(連載9回)
~繁忙期の人材確保のシステム化~
佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役
毎年10月~12月は温州ミカンの収穫時期に当たり、最も労働力を必要とする時期です。今年は収穫労力の確保をシステム化しようと、昨年、アルバイト確保に成功した和歌山県が主催するHPのグリーンサポートを再び活用しました。
今年は7人からの問合せがあったものの、確保できたのはわずか3名でした。幸い、昨年のメンバー5名から今年も弊社でのアルバイトを希望する意思を伝えてきたのでOkayしたところ、来社と同時に仲間を呼びたいとの申し出があり、全て受け入れたところ、合計で13名(男子7名、女子6名)のアルバイトが集まりました。一般の農家に聞くと、ハローワークに求人広告を出しても農業への求職希望者が少なく100人以上の順番待ちであるとのことで、人手不足を訴えていました。
弊社ではそういった問題を解決するシステムとして、中核農家7戸と連携して、アルバイトのメンバーが自由にグループ内の農家を渡り歩けるシステムを作りました。そうすることで、農家は必要なときに必要な人員を確保できるようになりました。このシステムにより連携農家からは感謝の言葉をいただきました。
しかし、こうなるまでには、弊社としても多少のリスクがありました。アルバイトのメンバーの大多数は、温州ミカンの収穫では未経験者です。それらのメンバーにも正規のアルバイト賃金を支払いながら、弊社で数日間収穫の訓練を行った後に、連携メンバーの農家に作業に出て貰いました。また、宿泊施設も弊社が運営しました。
多くの一般農家は、収穫のための労力不足が続いているという問題を抱えており、弊社のこのシステムを聞きつけた農家から収穫作業を請け負って欲しいとの依頼があり、20アールを弊社社員とアルバイトで請け負い、収穫をしました。次年度の請負作業の予約も入り、来年はさらに請負収穫の規模が拡大しそうです。
このような活動を通じて、私が考える農業現場の理想像の一部が具現化できました。果樹農家の高齢化が進む中、弊社の労働力は若者で支えられているからです。この取組みを知った私の友人の梅生産農家やブドウ生産農家から問合せがあり、アルバイト確保の依頼が入っています。和歌山農業の特産品である温州ミカン、柿、梅、桃、ブドウといった果実の収穫作業は、機械化が非常に困難であり、収穫の労働力が規模拡大の鍵を握っています。この作業人員を確保することで、規模拡大が可能ではないかと考えています。友人らはそれなりに規模拡大を進めていますが、若者のアルバイト確保は困難であり、とても苦労しているとのことでした。
まだまだ新人農家の私ですが、若者が仲間と楽しく農作業が行える環境を整えない限り、農業の後継者は育たないと考えています。最近、孫とテレビ番組を見ていると、子供達が集団で何かに取り組むといった番組が多いように思います。ここらにヒントがあるのではないかと考えるようになりました。
農業の課題でもう一つ大きなことは、農産物の販売です。当たり前の課題ですが、JAを通じて大量に共同販売する他に、ネット販売によるC to Cによる自己完結型の販売あり、個人で市場出荷をしたり、宅配をしたり、それに加えて直売所に出したり、民間の流通業者からの依頼で商品作りをしたり等々、様々な販売方法があります。また、最近では加工するなどの6次産業への取組みが推進されています。
弊社の流通対応は、第3回で紹介しましたが、現状の流通形態の中で、さらに生産者の顔が見える取引にシフトしていき、Citrusブランドの商品作りに取り組んでいます。新規参入した某流通業者と連携して、今期の温州みかんは、施肥に特徴を持たせた生産に取り組みました。できあがった果実や土壌の分析などについて専門的に行っていき、他とは違ったところを売りにしようと試みています。まだまだ、試験段階ですが、安定して特徴が出せるようになれば、新規参入の流通業者とタイアップして流通範囲を広げていく計画をしています。
また、6次産業化の可能性も検討を始めました。農産物の流通はどの方法が有利かはよく判りませんが、常に様々なルートを駆使していけば、儲かる可能性はあるように思えます。