-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

株式会社Citrus 株式会社Citrusの農場経営実践(連載40回)
~ギリギリ社員1名確保、研修生も続いて~

佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役

 今年2月21日付けで社員1名を新規採用した。昨年6月にCitrus勤務5年目の社員から来年2月末で退社し自立就農したいと届出があり、人材育成が会社定款にあり、自立と申し出がある以上強く遺留を求めるのもポリシーに反すると理解しつつも会社運営者としては株式会社Citrusをどうすればいいのだろうかと不安な状況が続いていた。農林大学校の卒業生や研修生の受け入れを掲げ昨年末まで募集を続けて来たが誰も応募がなかったが、今年の2月5日に昨年に弊社に農家研修に入っていた和歌山県農林大学校就農支援センター社会人課程の研修生(地元出身)の大前育摩氏が、就農支援センターで社員募集していると聞いたので相談したいことがあると訪ねてきた。研修期間中の大前氏は研修修了後に就農と聞いていたので、強く入社を求めなかったが、本音は大前氏の人柄や仕事ぶりを見て密かに入社を望んでいた。そこで、その思いを就農支援センターに伝えていたところ相談に訪れたのである。大前氏の相談事とは「近い襲来将来に自立就農したいが農地確保や経営のめどが立つまで弊社で働かせて欲しい。短期雇用でも採用してもらえるのか」と言うことであった。私からは少なくとも3年間は勤務して欲しいと提案したところ大丈夫ですと答えたので、即刻内定通知した。昨年は25日間一緒に仕事してもらっていたので迷うことはなかった。それに、農林大学校の研修終了者であり会社設立時のポリシーもクリヤーした。

図、谷端氏(手前左)、大前氏(手前右)合庭氏(後ろ左)東山主任(後ろ右)佐々木(中央)

 2021年度も社員2名、研修生1名(地域おこし協力隊事業)の3名での農作業が進められることとなった。昨年3月入社の女子社員を弊社の企画・管理主任に任命し各種事業計画作成を任せたところ、とても社員経験1年とは思わないくらいのスピードで作業計画や事業計画を樹立し、主任としての責任を果たしてくれるようになった。さらに女性としての鋭い企画力を発揮し、私が訴えているグロワー/シッパー構想を押し進める形ができてきた。リーダーを女性とすることでシッパーを担当する株式会社みかんの会の男性社員をも巻き込んで農作業を手伝ってもらえるような企画を提案し協力体制が整ってきた。そうして株式会社みかんの会の事業にも参加する運びとなり、毎月1回両社の会議を持つことも決まった。両社の若者らで意見調整がスムースに進み私のがまとめ役をするまでもなく計画が進められるようになってきた。

図 グラワーシッパー定例ミーティング

 一方研修生の合庭氏(地域おこし協力隊)の2年後の自立についての方向性が役場担当課と調整ができ研修生自立のための農地(みかん園)を弊社Citrus名義で利用権を設定しながら確保していくこととなり先日一件優良な園地が確保出来た。研修生の合庭氏は、自分の名義で農地を借り受けできないシステム(今借り上げると自立となり研修中断とみなされる)のようであり、これには役場農業委員会が協力してくれることとなり、農地確保に心強い味方ができた。今回の離農希望農家の一件を役場ぐるみで解決できたことは役場職員からもいい勉強になったとコメントがあった。話の始まりは、弊社に研修に入っている合庭氏のことを知った離農希望農家が研修生の合庭氏に直接農地管理依頼があった。当初いい話と思ったが研修システム上の課題があり、離農希望農家、近隣農家、弊社を交えた会合を役場が企画し進めたことで、離農もスムースに進み、近隣の農家も借受可能な農地を確保してその会合により離農農家の農地の放任が回避できた。

 事業を進めていけば課題にぶつかるが情報公開で助けが入る現状に少しは安心感を持てる運びとなった。

 一方自立就農を目在して退社した谷端氏は有田市の篤農家に1年間弟子入りするかたちで就農し、その後その農業経営を継承するようになると言う報告を受けた。今年に入り離農・就農が交差する現状に直面し、いまのところ結果オーライのような気がしている。

 しかし、新規就農にあたり農地の確保に大きな課題がある。離農しようと考える農業者の相続人に当たる息子や娘の考えが表に出てこないので、相続した農地を継続して貸してくれるのかどうかの確認は難しい。今回の借り受けた農地も高く購入してくれる方が現れたら直ぐにでも売りたい意向も示していた。新規就農者は農地を買う余裕がない。

図 有田川町農業後継者受入協議会設立メンバー(8月25日)

 5月に入りみかんの花も満開をむかえたとき、フェイスブックを通じて知り合った方から、引きこもり青年を農業研修生として2年から3年指導して欲しいとの依頼があり、依頼者はその青年に依頼者の農所有する農地の管理を任せたいと言うのだ。研修条件など全くの白紙状態でその青年家族と面談した。依頼者はその青年の雇用を望んでいたが、会社としては9期目の決算は赤字であり雇用しての研修は全く考えていないことを青年家族との面談をおこなう前に依頼者に伝えた。それを承知で青年家族と話し合った結論は、無報酬で1年間社員と共に仕事を続けると言うこととなり、6月から研修に入った。通勤には高速道路で1時間を要する距離である。引きこもり2年間でみかん栽培管理作業が続くかと半信半疑のスタートとなった。我が社での人間関係がよかったのか休まず続いた。そこで社員みんなで話し合い研修期間を週に4日としてルール作りをした。サマータイム(午前6時、お昼休みを長く午後6時終業)のときは週3日間の実習とした。青年は家を午前5時に出ることとなっても休むことなく出勤してきた。勉強意欲は本物と社員らで確認し合った。その一部始終を県関係者に伝えたところ、令和3年度から国の就農準備型資金が適用されれば県はさらに30万円上乗せするとう事業があることを伝えてきた。その事業採択条件とは農業後継者受入協議会を設立すれば、その組織で研修を受けたいという青年に適用できるシステムである。受入協議会設立の話は昨年の8月頃有田川町で取り組みたいとメンバーメンバー登録の依頼があり1番バッターで登録した経緯はあった。今年7月に入って研修生が具現化したので町に組織化を急がせた。町としても即対象者が現れてこなかったので組織化の進捗はなかったが、現況を知った町職員が動いた。結果、今年の12月から準備型支援を受けるための事務手続きに入ることとなった。これにより青年(31才男)は180万円(国150万円、県30万円)の支援を受けながら有田川町受入協議会内で農業研修を受けることが可能となる。ウンシュウミカン栽培研修は弊社Citrusで野菜は別途野菜農家でと計画書を作成している。但し研修期間終了後1年以内に就農が条件である。従って弊社には2年後必ず2名の研修生を就農させる役目が発生した。

 コロナ禍での経営の危機はこれからも続くがコロナ関連の事業令和2年度経営継続補助事業も1月末ギリギリに事業が完了し実績報告をネットで出来た。今のところ人員確保、ハード整備など順調に運営できている。

図、農産加工品配送用軽トラックとドライフルーツ製造用スライサー(経営継続補助事業)
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