株式会社Citrusの農場経営実践(連載23回)
~6次産業化を加えた2015年度決算終わる~
佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役
当社の2015年度の決算が終わった。当期は40万円ほどの黒字となったが、単純には喜べない。『平成25年度ものづくり・商業・サービス革新事業』(以下「ものづくり事業」という)の補助金が入ったことにより事業外収入が増加し、そのための黒字である。しかし、これまでの累積赤字は消えていない。
前年度の6次産業化による総売上は1000万円を超えることが出来たが、6次産業部門は2万円程度の赤字に終わった。これは、当初、乾燥野菜や乾燥果物が売れるという見込みはあったものの、思うように販売が伸びなかったためである。
また、この事業が開始された時期が温州みかんの収穫期と重なり、充分な労働力を確保することが出来なかったため、せっかく新規に導入した乾燥機をフルに稼働させることが出来なかった。そのために、乾燥した加工品の現物がないことから、新商品の提案ができない状態がつづいた。 製造業のプロなら「当たり前の世界」と笑われるが、農家が試作品を生産して商品として売り込むためには、高度な製造技術と多額の経費を要することがわかった。しかたなく、多くの農産加工品を土産物として販売している業者に相談し、売れ筋商品の加工を請け負った。温州みかん・トマト・デコポン(不知火)・ダイコン・タマネギ・柿など様々な農産物の乾燥品を試作したが、受注がとれる商品は一部にとどまった。売れ筋商品は見つかったものの、加工するための原材料がオフシーズンで手に入らないこともあることから、年間を通して加工品を製造することが出来ない。
今年度はしっかり計画を立てて加工原材料の確保に努めたいと考えている。
その報告書には会社の損益計算書を添付しなければならないので、ごまかしが出来ない仕組みになっている。その報告書も期限内にネット登録することができた。
2015年度は、加工施設の設置など多額の経費を費やしたため、経費面での心配が絶えなかったが、関係機関や本誌編集長の石谷氏の指導により、弊社は初年度に黒字化できたことは非常にうれしく思っている。