-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

評価員教育プログラム

※普及ニュースに掲載された本講義受講者のレポート
  セミナー受講者の修了レポート

セミナー開催の趣旨

 現代の農業は、化学肥料や化学農薬の登場により生産性が飛躍的に向上しましたが、同時に土壌や水質などの汚染、自然生態系・農業生体系への悪い影響が現れてきました。それらの問題を改善するために、GAP(Good Agricultural Practice、適正農業管理)、つまり「良い農業の実践」が提案されました。GAPは、環境・資源の保全により農業の持続性を確立し、農業者の作業の安全や消費者の食の安全を確保するための、いわば現代農業へのアンチテーゼなのです。

  「良い農業の実践」の道標として2011年5月に「日本GAP規範ver.1.0」が刊行され、栃木県や富山県、長野県などでも県版の「GAP規範」が作成されています。農業者は、「GAP規範」を必携の書として自らの農業計画を見直し、課題の改善に努めることが必要です。また、普及指導員や営農指導員は、農業者のGAPへの切掛けを作り、農業者のGAPを具体的に支援する必要があります。

  農業関係者が農業者のGAPを支援するためには、GAP規範の理解と農場評価の判断力が必要です。農業者の農業実践がGAPであるためには、先ず第1に環境・人・食品に関する充分な「リスク認識」を持って農場における問題点を把握することが必要です。このようなリスク認識を支援することがGAP指導者の大きな役割の一つであり、農業者自身よりも客観的な判断ができるからです。

  農場の、①何処が問題なのか、②なぜ問題なのか、「GAP規範」に基づいて問題の根拠を明らかにし、③「どうすれば良いのか」を指導(示唆)することで、農業者は問題点の改善が容易になります。

  「GAP実践セミナー」では、GAP概念の生い立ちから始まり、GAPに対する正しい認識を学びます。また、「日本GAP規範農場評価制度」に基づき、モデルケースでの農場評価作業を行うことで、GAP指導者の農場評価能力を高めることを目標としています。

  また、「農場実地トレーニング」では、農場現場に赴き、実際に受講者が農場主へヒアリングを行い、“自分の目と耳”で事実を拾い上げ、その情報を基に問題点を洗い出し、それを評価するという演習を行います。さらに、農場評価実習で身に着けた技量を基に、具体的なGAP指導計画を立てる実践的な研修を行います。

農場評価のポイント

  • 「農場評価」では、評価員が評価対象の農場や生産組織に赴いて、農場や組織の管理者、農業現場の生産者に質問しながら、農場の運営状況や組織の管理実態を確認し、「日本GAP規範」の遵守レベルを評価・判定します。
  • 農場評価は、農家認証の合格や不合格を決めるために行うものではありません。評価作業としての「農場検査」では、管理の問題点(不備・欠陥、抜け)や具体的な「リスク」を捜します。評価の結果は、農業者・農場の改善のためのものです。
  • 農場と組織の「監査」の意味は「実態を見る」ことですが、実際には実態を聞くことが大切であり、農家や組織の具体的な行動や動作を確認するためには、評価員の質問の仕方や農業者の回答の聞取りが重要です。
  • 農場(組織)評価規準(チェックリスト)は、評価員が農場検査と組織監査の過程で発見した問題点を整理するための項目のことです。評価の作業において使用する質問項目ではありません。 同じチェックリストを使うから検査の質が一定になるのではなく、評価員の力量によって評価の内容が決まります。
  • 評価員は多少とも個性が出ますから、同じ現象でも指摘の角度、視点が人によって異なります。しかし、評価員は、改善が必要な問題点を見逃してはいけません。

「日本GAP規範」評価員教育プログラムについて

 当協会は、農場評価制度の適正な運用と品質の向上のため、評価員教育プログラムを提供し、評価員を育成しています。このプログラムには、GAPに関する知識および技能を習得するための研修と、評価員試験があります。

  •  GAP総合講座
    ① GAP実践セミナー
     (GAP概論、農場評価概論、GAP実践、評価演習、受講レポート)
    ② 農場実地トレーニング
     (農場調査、聞取り、評価、判定、指導、報告書)

  •  評価員検定試験
  •  評価員技能研修