株式会社Citrusの農場経営実践(連載42回)
~経営改善計画実行~
佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役
これからのCitrus運営をどうしていくのかと、過去10年間の問題点を整理し社員らと経営改善目標を立てた。最大の課題は、管理している柑橘園の老木化と優良品種へ更新の遅れであるということになり、今年、思い切って優良品種への更新にふみきった。先ずは現行での人気品種の「ゆら早生」への転換を進めた。近年、ハッサクの売れ行きが伸び悩み販売に苦慮していることから、このハッサク園をゆら早生園に更新した。品種更新と言葉では簡単だが、樹齢40年の大木の伐採作業は容易ではない。それに果樹類は、一年生作物とは違い更新しても5年間程度は経営が成り立つ収益があがらない。しかし、ここにきて更新以外に将来の生産量と品質をあげる手段がないと社員らが判断し更新意欲が高まったので会社として決断した。
品種更新する計画面積と同程度の30アールのみかん園を新たに借受して管理することにした。それにより伐採による減収はある程度カバー出来るめどは立った。しかし、幼木を成園化するための管理作業がこれまでの労働時間にプラスされることになる。そこで、省力化できる作業を見出し、苗木管理に労力を回すことにした。結果はどう出るかはわからないが今年は軽めの剪定とし作業時間を短縮し、更新作業にあてた。軽めの剪定は他にも理由があり本年度の我が社のみかん樹の生理的な要因からも判断できたので決断ははやかった。
みかんからみかんへの更新は簡単だったが、ハッサクの伐採と抜根処理には重機が必要で、グループ会社の株式会社みかんの会から作業応援してもらった。抜根に使うパワーショベルと抜根株の運搬のためのトラックを業者からレンタルした。また、伐採した樹をチップ化するためにチッパーをJAでレンタルした。
パワーショベルの運転技能資格(小型車両系建設機械 3トン未満)は社員全員が取得しているので操作はできたが、実務経験が浅いことから作業能率はあがらなかった。応援してもらったみかん会のメンバーにパワーショベル運転技術がプロ並の腕の持ち主がいたので、なんとかレンタル期間中に作業をおわらせることができた。現在は、伐採した樹は焼却処分できないので品種更新作業のネックとなっている。
伐採後はトラクターで整地後、一年生苗木200本を定植した。一般的には二年生の苗木を100本定植するが、citrusでは早期成園化技術として定植三年後にある程度の収穫量確保を見込んでいる。また、ゆら早生の特徴として樹勢が弱いので一年生苗木を定植することで直根を増やすことができるとされている。今年更新作業をこなしてきたことで自信が付いたので、来年は三倍の面積の更新計画を立て、苗木を注文した。
5月に入り、改段畑の石垣の崩れの恐れがある部分の修復作業をしたいというので、やらせてみた・著者自身は石垣積みの技術も経験もないが、社員の東山は石垣積みの本を参考に見事に修復した。今、有田と隣町の下津一帯の石垣みかん園システムを世界農業遺産登録に向け進めているが、若い社員がその石垣を守るための技術継承ができたような気がした。