株式会社Citrusの農場経営実践(連載12回)
~収穫量を増やす日頃の取組み~
佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役
平成26年度は、不作になる「裏年」を予測していたのですが、5月の連休過ぎから開花が始まり、その後順調に5月13日に満開期を迎えました。着花の量は平年並みでした。弊社の近くの樹園地では「裏年」の園も見られることから、弊社の裏年を予測した上での栽培管理の成果だと思っています。
その管理とは、昨年の開花期に遡ります。着花数の多い樹に目印のマーカーを付け、その樹の摘雷をし、また、摘雷できなかった樹は、上部を全て摘果し、翌年、すなわち今年に備えました。年が明け、今年に入り、勢の弱った樹園地では、花芽の生育を促すために液肥を散布し、また、弱めの剪定を行い、できるだけ実のなる「結果母枝」を残す管理をしてきました。
このような管理技術は古くからあるものの、実施するタイミングを逃してしまいがちになるので、弊社では、農業の雇用事業研修の2年目を迎えており、隔年結果を防止することをメインに据え、その基礎を指導することにしていましたので、その成果が見えたものと思います。
一般の農家では、着花数が多過ぎる樹でもマーカーを付けることは少なく、花の落ちる「落弁期」が過ぎると、どの樹が着花数が過多だったかどうかを見分けられなくなり、隔年結果を防止するための摘果を怠ってしまいがちです。幸いにも弊社では、必然的に研修しなければならない課題が有りましたので、学校と同様の指導を行うことにより、研修生にこのような技術の理解を深めることができたと思います。
しかし、着花状態は平年並みで安心したのですが、5月末に続いた真夏並みの高温が生理的な落果を助長し、せっかく着花した樹の実が留まらない現象も見受けられ、次の心配が出てきました。近年は、なかなか気候が読めない状態が続いているので、「定番の管理技術で対応しにくくなった」という篤農家の声も聞きます。これらの気候変動に伴う病害虫の発生状況などについても、しっかり観察していく必要が高まってきました。このようなことから、近年の気候変動に対応した技術革新の必要性が出てきています。
そんななかで、少し疑問が出てきました。新規に農業生産法人をスタートさせて3年目を迎えますが、外部の関係機関から栽培技術の指導を受ける機会が全くありません。JAへの出荷をしていないので、一般の栽培技術講習会へのお誘いもありません。また、その他の生産グループに所属していないので、そのような関係機関からの栽培技術講習の案内も届きません。これが普通なのかは知りませんが、農業を始めるにあっての指導は、JAも行政も、生産現場に対しての直接的な指導の仕組みができていないのではと思っています。一部の民間の肥料業者は、肥料売るための手段としてではあるものの、定期的に講習会をもっているので、そこに社員を派遣して勉強させています。ここにきてようやく、JAにおいても青年部を結成して各種の研修会を計画し始めました。この夏、市場研修の案内があったので、社員2名をJA青年部に加入させ、研修に参加させています。
現状では研修の場が少ないことに疑問はあるものの、自分たちで行動を起こさない限り変化はありません。そこで現在、弊社は、弊社の法人構成員である流通業者の「株式会社サンライズみかんの会」に出荷している農家を集めて研修会をもっています。昨年は30名近い農家の参加がありました。今年は「病害虫対策」、「食の安全」をテーマに「GAP」と、そしてスパーバイヤーによる「最近の流通事情」の勉強会を和歌山県果樹園芸試験場の協力を得て計画しています。
ビジネスというものは、「待っていてもチャンスは来ない」、「自ら行動しない限り、良い情報は入って来ない」というのは当たり前であると実感する今日この頃です。