(講師が講演内容を簡潔にまとめたレジュメを掲載しました。)
SDGsの確認(各目標に不整合がある、15年時点の制約も)
- 貧困をなくす あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を
- 飢餓ゼロ 飢餓に終止符を、食料安定確保と栄養状態の改善を達成、持続可能な農業を推進
- 全ての人に健康と福祉 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進
- 質の高い教育をみんなに 全ての人々に公平で質の高い教育、生涯学習の機会を促進する
- ジェンダー平等の実現 ジェンダーの平等を達成、全ての女性と女児のエンパワーメントを
- 安全な水とトイレを世界中に 全ての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保
- クリーンなエネルギーをみんなに 全ての人に持続可能で近代的エネ ルギーへのアクセスを
- 働きがいも経済成長も 持続可能な経済成長、生産的完全雇用及び働きがいある仕事
- 産業と技術革新の基盤を 強靭なインフラの整備、持続可能な産業化推進と技術革新拡大
- 人や国の不平等をなくそう 国内および国家間の格差を是正する
- 住み続けられるまちづくり 都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能に
- つくる責任 つかう責任 持続可能な消費と生産のパターンを確保する
- 気候変動に具体的対策 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
- 海の豊かさを守ろう 海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全、利用する
- 陸の豊かさも守ろう 陸上生態系の保護、森林の持続可能な管理、砂漠化・土地劣化の阻止
- 平和と公正を全ての人に 全ての人に司法へのアクセス、効果的で責任ある包摂的な制度の構築
- パートナーシップで目標を達成 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップの活性化
いま日本社会で何が起きているか Part.Ⅰ
企業:経営環境・競争条件の激変で存続危機と大変身(DX)の決断
◆デジタル技術の深化、拡大による大変化の強制(DXが生き残りのカギを握る)
<デジタルへの変革>から<デジタルでの変革>へ
10年に100倍(30年で100万倍)の高速で能力向上。強力な道具が次々に登場、競争条件を変える。
市場(顧客)アクセスの劇的変化(国境を越えた市場、電子取引、ビッグデータ解析、等々)
業務体系のネットワーク化による飛躍的生産性向上、自動化導入による競争力変化。
競争条件激変で産業交代=ex:流通:百貨店→スーパー→コンビニ→ネット通販:直販
◆地球環境悪化による厳しい制約条件(SDGsが生き残りのカギを握る強制力)
法律による規制、投資家の評価(ESG投資)、消費者の選択(エシカル消費・安全安心)
CO2排出の有無が産業の交代を強制する(ガソリン車⇒電気自動車、火力発電⇒再エネ)
カーボンフットプリント*による商品評価軸の変更・脱プラスチック・有毒ガス排出規制など
*原材料調達から配送、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体の温室効果をCO2に換算
し評価
◆グローバル経済の見直し(国家安全保障、経済安全保障)による自国回帰(安全保障がカギ握る)
重要資源を他国に依存するリスクの浮上⇒エネルギー、希少金属、食糧など安全保障の再検討
自国資源回帰、緊密同盟国との協調経済による自国産業の選択的再構築
いま日本社会で何が起きているか Part.Ⅱ
農業:自然環境・社会環境の激変で存続と進化への大変身(GAP深化)
◆地球環境悪化による厳しい制約条件(SDGsがGAPを深化)
SDGs12. つくる責任 つかう責任 持続可能な消費と生産のパターンを確保する
・安全安心な農産物、脱CO2、脱過重労働、安全な作業環境⇒減農薬、減化学肥料、自動化、再エネ
・廃棄物循環(3R:Reduce、Recycle、Reuse)の仕組みの構築(循環型農業)
SDGs12. つかう責任 CFPによる商品評価軸の変更・脱プラ・有毒ガス排出規制など
*CFP=原材料から配送、廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体の温室効果をCO2に換算し評価
SDGs7. クリーンエネルギー⇒再エネ、畑地の上にソーラー、小型水力、風力、電動農機、ごみ発電
SDGs9. 技術革新⇒自動化ロボット、ドローン、IoT、データ駆動農業、作業者の健康管理
SDGs6. 安全な水⇒衛生的な水の確保 地下水汚染防止、脱窒素資材
・消費者の選択(市場の誘導) エシカル消費・安全安心、減農薬、減化学肥料 脱CO2
SDGs11. 住み続けられるまちづくり⇒住み続けられる地域づくり
・地域再エネ、農産物生産、各種雑貨品、市場との一体化⇒「地産地消」化の挑戦
SDGs14.海の豊かさを守ろう SDGs15.陸の豊かさも守ろう
■SDGs以外 ◆食糧安全保障=農業の国内回帰 ◆メタン回収畜産、陸上養殖、細胞農業など
DX理解の方向性
・平成後期~令和、IT/ICTから「デジタル」へ、シーズとニーズ双方の"変身"圧力
⇒インターネット、スマホ、高速(大容量)通信で映像、クラウド、AI、ロボット、、
⇒規制の厳しくない海外から異次元のサービス、検索サービス、GAFA、SNS、、、
①デジタルがトランスフォーメーション起こす(シーズ観点)
- デジタル利用で可能になった業務処理、情報処理、新しい状況が見える化
- 消費者や取引先との関係が直接化
- 競争環境変化、新サービス続々誕生、既存ビジネスを破壊、企業の交代
- 業務改革で経営コスト激減、柔軟な経営できない企業の退場
しかし、どこへ向かう? ⇒経営の効率化、売上・利益の増大だけ? 新市場創造、
- デジタルマネー(キャッシュレス、バンクレス)関連~~
- デジタル医療(健康)関連~~ ・デジタル農業、デジタル水産業(陸上養殖、、)~~
②SDGsが手段や方向性が正しいかどうかの評価軸になる(ニーズ観点)
SDGs観光(クリーンエネルギー、廃棄物処理、フードロス削減、循環型水利用、、、)
デジタル利用で在来業務をSDGsに合わせたエネルギー最小化形態に変える(オンライン)
SDGsによって現れた新事業、新分野(ブルーオーシャン)への挑戦(別ページ)
SDGsが提起した農業の方向
・カーボンフットプリント(CFP)
産地集中型の再検討、肥料・資材・燃料(エネルギー)・集荷・配送・廃棄などのトータルライフサイクルでの温室効果の試算とCO2換算
⇒地産地消型の農業の再設計は可能か、地域社会再創造の中核としての農業
・カーボンニュートラルエネルギー
大発電所による集中電力生産から超分散再エネ電力への転換は可能か
⇒地産地消費型のエネルギー地域自給は可能か
⇒地域回帰型経済、地域回帰型社会 農業が中核産業になれるか
⇒電動農機、自動運転農機による生産性向上は可能か
・畜産物
仮想水=牛肉100gには2,060リットルの水、豚肉100gには590リットル、鶏肉100gには450リットルの消費
げっぷや糞尿=メタンは二酸化炭素(CO2)の27倍の温室効果を持つ
肉1kgの生産に必要な穀物の量は、牛肉が11kg、豚肉が7kg、鶏肉が4kg(鶏卵なら3kg)
(農林水産省の「知ってる?日本の食料事情」)
⇒畜産業のシステム的構造改革
⇒細胞農業?
日本農業の進路(DX、SDGs、安全保障)
◆デジタル技術の深化、拡大による変化(DXが生き残りのカギを握る)
無線、スマホ、クラウド、IoT、ビッグデータ、AI、自動農機、ドローン、ロボット、、、
- DXの0段階=経費の圧縮による利益増加 各領域でのPC利用
- DXの第1段階(業務の電子化から深化、ネット化)<デジタルへの変革>
電子受発注、共同推進者の情報共有、ネット通販
- DXの第2段階(業務の仕組みのスクラップ・アンド・ビルド)<デジタルへ(⇒で)の変革>
在宅(遠隔監視)農業、オンライン会議、データ駆動型経営(AI、センサー)
- DXの第3段階(業態変革、新農業形態・創業)<デジタルでの変革>
本業の技術・情報資産を活用、成長市場に経営資源を配賦
成長市場の象徴=SDGs関連⇒SDGs×DX
養殖型・IoT制御型畜産、水産業、ハウス農業、極端な方向では「細胞農業」
◆地球環境悪化による厳しい制約条件(SDGsが生き残りのカギを握る)
◆グローバル経済の見直し(国家安全保障、経済安全保障)による自国回帰(安全保障がカギ握る)
参考)SDGsの提唱で際立った価値観の根本的転換
◆化石燃料使用の考え方
旧:有限な資源である化石燃料利用からの転換⇒原子力、再生エネルギー
新:地球環境を破壊する化石燃料利用から安全な資源利用⇒再生エネルギー、CO2吸収技術
再生エネルギー⇒日本はエネルギー資源豊富な国にトランスフォームできる
産業構造転換⇒自動車:ガソリン車→電気自動車、電力:火力→再生エネルギー(地産地消型)
◆水産資源の減少対策
旧:漁獲制限による資源保護
新:養殖漁業⇒さらに陸上養殖(IoT制御によるデジタル管理漁業)
◆菜食主義
旧:動物を犠牲にする肉食の排除、健康維持も菜食有利(反論:長寿者は肉食愛好家)
新:畜産業は水や穀物の多消費で人間社会を圧迫する、ビーガン人口の拡大
⇒細胞農業?
参考) DXの3つの階段
<デジタルへの変革>から<デジタルでの変革>へ
- 変身の強力な武器=デジタル(シーズからの後押し)
無線、スマホ、クラウド、IoT、ビッグデータ、AI、自動農機、ドローン、ロボット、
- DXの0段階=経費の圧縮による利益増加(コンピューターによるコストダウン=昔から)
業務のコンピューター利用(電子化)~非効率業務の撲滅
FAXの中止、電子レジ、文書の電子管理、電話中心からメール中心
- DXの第1段階(業務の電子化から深化、ネット化)<デジタルへの変革>
電子受発注、社内グループウエア、社内電子掲示板、ネット通販
- DXの第2段階(業務の仕組みのスクラップ・アンド・ビルド)<デジタルへ(⇒で)の変革>
在宅勤務常態化、オンライン会議、データ駆動型経営、AI・自動化業務改革
クラウド利用(経理、人事、労務、営業)でアウトソース、WEBマーケティング
- DXの第3段階(業態変革、新サービス進出・創業、産業・社会構造変革)<デジタルでの変革>
本業の技術・情報資産を活用、成長市場に経営資源を配賦
成長市場の象徴=SDGs関連⇒SDGs×DX
参考) デジタルツールで何が起こっているか
★「デジタル」はICT(情報通信技術)の飛躍的発展形で、ICTとはレベルが数段違う。
★デジタルの新しい強力な道具を使って、企業、産業、社会、個人、至る所で変革
- インターネットの普及⇒有線、定額、企業でも家庭でもWiFi、スマホもWiFiで
- 無線⇒場所の制約から解放=通信の主役に、広域WiFiサービス、LPWAN(IoT利用)
- 大容量通信⇒リアルタイム映像の利用、オンライン世界の実現、在宅勤務、学習、会議、、、
- スマホ⇒インターネット入り口としての高機能ポケット型コンピューター 各種新サービス
- クラウド⇒企業も個人もソフトの水道の蛇口型で利用、Webアプリケーション、SaaS、、、
- IoT⇒工場内、農場内、養殖場内など広域の環境制御、少数の人員での最適管理
- ビッグデータ⇒スマホ、IoT、取引履歴などから膨大なデータ収集、解析により飛躍的改善
- AI⇒画像認識による各種プロセス自動化、データのグラフィックな可視化、画像として解析など
- ドローン⇒配送、空中からの情報収集、空中撮影、広域の管理
- ロボット⇒搬送、配達、会話、介助、配膳、調理など、応用分野多数
◎質問
日本の農業生産者は大小問わず農業DXの対象者なのでしょうか?
日本には比較的小規模の生産者も多いかと思いますが必ずしも全ての生産者で農業DXの対策対象ではないという認識でよろしいでしょうか?それとも、労働力不足なども含め、生産者の規模に関わらず、日本全体として必要となるときが来るのでしょうか
(中島洋)SDGsもDXも個々の問題です。地域創成と同時に幅広く進めることが良い
SDGsが個々の問題でもあるのと同じで、DXも個々に対応するのが前提だと思います。ただ個々ではできない問題があるので、その場合には近隣の同志を募って共同で進める必要があると思います。地域創生を同時に進めるならば、幅広く同志を募らないといけないと思いますが、SDGsは若い人ほど理解が進み敏感に反応するので、同志作りには若い人にどう働きかけるかの知恵の使いどころかと思います。
2023/5