-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

GAP普及ニュース 52号

【年頭のご挨拶】
持続可能性に配慮した農産物の調達基準の適合性を判定する力

田上隆一 一般社団法人日本生産者GAP協会 理事長

 平成29年の新春のお慶びを申し上げます。

 新しい年を迎えるたびに、「今年こそはGAPが正しく理解され、持続可能な農業が実現しますように」と祈願してきました。その意味では毎年同じことのようですが、今年こそは幅広い理解のもとに日本農業に浸透するような気がします。

 多くの国々でも、それぞれの事情で農業政策や産業としての農業の環境が変化し、その変化に対応すべく農業生産現場の管理体制も変化してきています。日本農業が直面する事情で言えば、食料自給率の回復や農産物マーケットの拡大を目指す農産物輸出です。そして、これらの事情の解決策として「農業の世界標準」が欠かせない課題となっています。

 政府はGAP推進を閣議決定しています。これに拍車をかけるように2020年東京オリンピック・パラリンピックにおける農産物の調達基準としてGAP認証が求められています。

 これまで日本は、世界で稀にみるGAP認証の少ない国であり、それでも大きな問題はなかったように思いますが、世界最大級のイベント開催に当たっては、グローバル化から逃れることはできません。「日本の食品は安全性が高い」という声を聞くことはありますが、それを証明するものがなければ世界では通用しないということです。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、持続可能性に配慮した農産物の調達基準(案)として「GAP認証の取得」をその要件として提示しています。

 ただし、日本の実情に合わせた対策として、認証取得のほかに、東京大会の信頼できる調達基準として「公的機関による確認制度」を打ち出しました。これは『農林水産省作成の「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」に準拠したGAP に基づき生産され、都道府県等公的機関による第三者の確認を受けている』ものは「調達基準を満たす」と認めるというものです。

 その際に、信頼できる調達基準であると認める公的機関による第三者の確認には、一体どのような要件が求められるのでしょうか。

 GLOBALG.A.P.などの第三者認証は、農産物の購入者と供給者双方にとっての信頼確認の手間を省くための社会制度として誕生したものです。それ以前は、欧米のスーパーなどの農産物の購入者は、自ら産地に出向いて、農産物の生産者である供給者に対してその信頼度を調査していました。ISOなどに倣ったGAP認証制度は、わずか10年で世界標準になりました。

 審査にあたって認証会社は、審査を受ける農業者(供給者)と「審査契約」を結びます。この制度における信頼性は、審査を受ける農業者が審査会社に対して説明責任を負い、審査会社は農業者の適合性を確認して社会に対しての説明責任を負うというところにあります。 この点で、公的機関による第三者の確認の場合はどうなるのでしょうか。審査契約が必要なのか、その場合の経費負担はどうなるのか、公的機関が適合性の眼力をもって合否を決めるのか、それとも農業者が生産物の適合性を立証するのか、制度上の違反があった場合はどうなるのか、すべてにおける法的な裏付けはどうなるのかなど、様々な課題があります。

 これらについては、新制度の登場を待つしかありませんが、例え制度がどのような形になろうとも、公的機関による第三者確認では、公的機関自身が「持続可能性」に配慮した農産物の調達基準の「適合性を判定する力量」を持たなければなりません。これは、農業者が自らの適合性を立証する、つまりGAP認証を取得すること以上に大きな課題です。

 当協会では、前身の組織の2008年より、普及指導員を対象にした「都道府県GAP指導者養成講座」を開催して、農場の適合性評価ができる人材を養成してきました。現在までに全国で3,300人以上が受講しています。さらに、受講修了者に一定の農場評価トレーニングを積んでもらって「GH農場評価員資格試験」を実施しています。この資格試験の合格率は65%程度です。国際規格のGAP認証を念頭に置いた内容で、それなりの厳しさがありますが、日本の農業普及指導員であれば十分に合格できる水準です。

 日本農業が直面する課題の解決策としてのGAP(適正農業管理)であれば、これを機に日本の農業産地はすべてがGAPとなるように推進しなければなりません。オリンピック・パラリンピックがきっかけであっても、それが日本の事情ですから、それでよいと思います。そうであれば、今年こそ大きな一歩となる年であると思えるのです。今年もどうぞよろしくお願いします。

2017/1


目前に迫る2020東京オリ・パラの持続可能な食品戦略は
-大会組織委員会の選択と産地の対応-

田上隆一 一般社団法人日本生産者GAP協会 理事長

持続可能性はロンドンから

 今から2年以上前、GAP普及ニュース40号(2014.10)の【巻頭言】で「2020東京オリンピックで国産野菜を供給できない可能性」を書いて以来、度々「2012ロンドンオリンピック・パラリンピックのサステナビリティ(持続可能性)への取組み」について記事にしてきました。ロンドン大会の組織委員会では、大会開催の5年前、2007年に「ロンドン・フード理事会」を組織し、関連するNGOやNPO組織、スポンサー企業、コンサルタントなどを委員としたフード・アドバイザリー・グループを結成し、オリンピック期間中に選手や観客に提供される食べ物に関する指針「フードビジョン」(Food vision for the London 2012 Olympic Games and Paralympic Games)を発表しました。

 "ロンドンと同じか、それ以上を目指す" といわれている東京大会で、持続可能な食品戦略を達成するためには、ロンドン大会で確立された「フードビジョン」について農業関係者に直接知ってもらうことが必要と考え、GAP 普及ニュース48号まで、数回に亘って「フードビジョンの翻訳:山田正美訳」を掲載してきました。

 振り返ってみると、「フードビジョン」では持続可能な食品戦略として、以下の5つの実践を約束すると記述しています。

1.食の安全と衛生
 食品の衛生管理基準とトレーサビリティ手順を守り、悪質な汚染をなくす等
2.選択とバランス
 品質・価格・文化の多様なケータリング、健康的で栄養価の高いオプション提供等
3.食料調達とサプライチェーン
 環境・倫理と動物福祉の基準に関する供給、地域を含むサプライチェーンのサポート等
4.環境管理
 ケータリングの最適化、エネルギーと水の効率の最大化、直接ごみゼロ、70%リサイクル等
5.スキルと教育
 持続可能なケータリング学習モジュールを定式化する品質信用フレームワーク等

 この「フードビジョン」は、大会開催7年前の2006年に発表された「ロンドン2012持続可能性方針」の実現のための具体策として策定されたもので、方針としての「持続可能な調達コード」は、次の4つの原則で構成されていました。

1.責任ある調達の実施
2.二次(使用済み)原材料の利用
3.環境影響の最小化
4.健康や環境に害のない素材の利用

先進国としての東京大会は

 さて、2020東京大会においては、大会開催5年前の2016年1月に「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、持続可能性に配慮した調達コードの基本原則」が、東京オリンピック・パラリンピック競技大会・組織委員会によって示されました。これはロンドン大会の「持続可能な調達コードの方針」にあたるもので、ここでは持続可能性に配慮した調達のために4つの原則を示しています。

1.どのように供給されているのかを重視する。
2.どこから採り、何を使って作られているのかを重視する。
3.サプライチェーンへの働きかけを重視する。
4.資源の有効活用を重視する。

 そして、2016年12月に、この基本原則に基づく「持続可能性に配慮した調達コード(案)」が公表され、この(案)に対して12月13日から27日までの15日間、パブリックコメントの手続きがとられました。これらは、2017年3月末までにまとめられ、食材の調達基準を含む「調達コード第1版」が策定される予定だということです。

 しかし、ロンドン大会に学んで「東京大会・フードビジョン」を策定するためには、関連するNGOやNPO組織、スポンサー企業、コンサルタントなどを委員としたフード・アドバイザリー・グループを結成して取り組むと、策定までに約1年はかかるといわれていますから、2018年3月頃になってしまうものと思われます。

 2018年3月ともなれば、東京大会の開催まで残すところ2年半です。この時期以降は、調達基準に合致したケータリング会社などのサプライヤーが、具体的な調達計画に基づいてビジネスプランを立てる時期となるのではないかと心配になりますが、農産物では川上(特に生産者)になるほどその心配は大きくなります。

東京大会の現実的な選択

 パブリックコメントの手続きを取った「調達コード(案)」では、「物品別の個別基準」として「持続可能性に配慮した農産物の調達基準(案)」「・・畜産物の調達基準(案)」「・・水産物の調達基準(案)」が示されています。(以下は「持続可能性に配慮した農産物の調達基準(案)」)

  1. 基準の対象は、農産物の生鮮食品及び農産物を主要な原材料とする加工食品とする。
  2. サプライヤーは、以下の①~③を満たすものの調達を行わなければならない。
    ①食材の安全を確保するため、農産物の生産に当たり、日本の関係法令等に照らして適切な措置が講じられていること。
    ②周辺環境や生態系と調和のとれた農業生産活動を確保するため、農産物の生産に当たり、日本の関係法令等に照らして適切な措置が講じられていること。
    ③作業者の労働安全を確保するため、農産物の生産に当たり、日本の関係法令等に照らして適切な措置が講じられていること。
  3. JGAP Advance または GLOBALG.A.P.の認証を受けて生産された農産物については、上記2の①~③を満たすものとして認める。このほか、上記2の①~③を満たすものとして組織委員会が認める認証スキームによる認証を受けて生産された農産物についても同様に扱うことができるものとする。
  4. 上記3に示す認証を受けて生産された農産物以外を必要とする場合は、上記2の①~③を満たすものとして、農林水産省作成の「農業生産工程管理(GAP)の共通 基盤に関するガイドライン」に準拠したGAP に基づき生産され、都道府県等公的機関による第三者の確認を受けていることが示されなければならない。
  5. 上記2に加えて、生産者における持続可能性の向上に資する取組を一層促進する観点から、有機農業により生産された農産物、障害者が主体的に携わって生産された農産物、世界農業遺産や日本農業遺産など国際機関や各国政府により認定された伝統的な農業を営む地域で生産された農産物が推奨される。
  6. サプライヤーは、上記2を満たす農産物を選択する上で、国内農業の振興とそれを通じた農村の多面的機能の発揮や、輸送距離の短縮による温室効果ガス排出の抑制等への貢献を考慮し、国産農産物を優先的に選択すべきである。
  7. サプライヤーは、海外産の農産物で、上記2を満たすことの確認が困難なものに ついては、組織委員会が認める持続可能性に資する取組に基づいて生産され、トレーサビリティが確保されているものを優先的に調達すべきである。
  8. サプライヤーは、使用する農産物について、上記3~7に該当するものであることを示す書類を東京 2020大会終了後から1年が過ぎるまでの間保管し、組織委員会が求める場合は、これを提出しなければならない。(畜産物と水産物の個別基準も同じ考え方なので省略)

「供給体制」と「確認制度」の確立を

 「物品別の個別基準」に基づいて「東京大会・フードビジョン」が策定されることになると思いますが、フードビジョンは実現可能なものでなければなりません。また、東京大会が"ロンドンと同じかそれ以上を目指す"持続可能な食品戦略であるためには、先ずは"我が国の現実"を踏まえたものであることが必要です。

 「物品別の個別基準」2①~③は、すべて「日本の関係法令等に照らして適切な措置が講じられていること」が肝です。「適切な措置が講じられていること」を確認するために、a)グローバル規格のGLOBALG.A.P.認証と、b)ローカル規格のJGAP Advance認証、およびc)「ガイドライン」準拠の都道府県等公的機関による第三者確認、を掲げています。

 これには様々な課題がありますが、特に重要と思われるのはこれらの調達基準であり、今後3年間でオリンピック・パラリンピックの農産物需要を満たす「供給体制」作りが可能かどうかです。日本国民の日常の食料を安定的に供給した上で、つまり、現状の生産・流通・販売のサプライヤーが、品質・数量ともに良好な関係性を維持した上で、国際規格の「日本的おもてなし」をするということです。そのためには、オリンピック・パラリンピックでの食材の具体的な需要予測に基づいた産地の特定や、そこでの増産計画が必要になるのではないでしょうか。また、これらの産地が東京大会の調達基準を満たすものでなければなりません。

 しかし、「物品別の個別基準」のa)、b)、c)の現状としては、到底オリンピック・パラリンピックでの農産物需要を満たすものではありませんから、緊急の課題として、これらの基準を満たすための「確認制度」を確立し、需要に見合った農産物の産地を作ることが必要です。これまで、国際規格としてのGAPやHACCPへの取組みが遅れていた日本の最大のテーマです。

普及率80%のロンドンに学ぶ

 一口に「ロンドンに学ぶ」とは言いますが、「世界一サステナビリティなオリンピック」といわれたロンドン大会で、食料の調達基準とされた「レッドトラクター」は、日本とは事情が全く異なっています。オリンピック・パラリンピックでの持続可能性に応えるためにレッドトラクターが普及したわけではありません。ロンドン大会開催の遥か以前から、イギリス国内の農産物・畜産物の生産農場の75%~90%がレッドトラクター認証を取得していました。この認証制度の創設者は、イギリスの農業者団体NFU(全国農民連合)です。1990年代から、農業に対する消費者の信頼を勝ち取るために、農業に係る環境保全や人権保護、食品衛生のコンプライアンスに主体的に努めてきているのです。

 農業者団体が強力に推進したレッドトラクターは、政府の環境政策としてのクロスコンプライアンスとの関係性も大きいのですが、結果として流通や小売りなどの買い手側の信頼を得られることができて、農業産地の当たり前の実践となり、約80%の普及率になったのです。「残りの20%は?」とロンドンの関係者に聞くと、「他は有機認証や動物虐待防止協会の認証を持っているので必要がない」との答えでした。

 また、イギリスの農業者や農家団体は、BRC(英国小売協会)食品規格の認証も取得しています。これは、HACCPに基づいた食品安全管理と品質やセキュリティ等などについての要求事項を含んだ国際規格の認証制度です。農産物の集出荷場や選果場などは、HACCPなどの自己管理システムが義務付けられています。

 イギリスでは、EUのHygiene Package(包括的衛生規則)が法制化されていますから、圧倒的多数の食品取扱事業者がBRC認証を取得しています。そのため、通常の農産物は、事実上BRC認証がなければ農産物・食品のサプライチェーンに加わることができません。このチェーンによって農産物食品は、チェーン全体でトレーサビリティが確立されています。

日本だからGAPが大会レガシーになる

 大会の開催以前から、国際規格のGAPとHACCPが確立されていたロンドンでは、レッドトラクターとBRCを基準にすることで大会の持続可能な調達基準は達成できたのです。そして、レッドトラクターは、NFUという農業団体によるイギリス国産のための認証制度ですから、もともと国産では調達できない農産物だけを、フェアトレードやGLOBALG.A.P.などの規格で調達すれば良かったのです。

 この点において、前述のロンドンの関係者によれば、「持続可能な食料調達基準は、大会のレガシー(遺産)ではありません」。「大会以前のレガシー(前代の人が残した業績)を組織委員会が活用した」ということになるのです。

 日本では、このような現状を理解した上で、独自のGAPやHACCPのオリンピック・パラリンピック対応を考えなければなりません。国際的な要求事項に対しては、避けるのではなく、日本の実情にあった形での信頼を取り付けられる解決策を考えなければなりません。短い期間ですが、オリンピック・パラリンピック大会をきっかけにして、戦略的な思考で実践することで、持続可能な農業の生産体制や、事業者としての食品衛生管理体制が実現でき、東京大会のレガシーとなって、持続可能な社会づくりに貢献することになります。

2017/1


《連載第5回》 『スペインには、日本でのGAP推進のヒントがいっぱい!』
世界のGAP先進地スペイン研修ツアー

田上隆一 一般社団法人日本生産者GAP協会 理事長

世界のGAP先進地スペイン研修ツアー

 世界標準と言われているGAP認証制度のGLOBALG.A.P.ですが、EUREPGAPと称する第一号の認証農場が日本で誕生したのは2001年ですから、わずか15年の歴史です。日本で農林水産省生産局が「食品安全ジーエーピー」として政策展開を始めたのが2004年ですから、スタートとしてはそれほど遅れていたわけではありません。

 それから約10年が経過し、日本政府による農産物輸出の拡大政策や東京オリンピック・パラリンピックにおける調達基準の問題で「国際規格のGAP認証を取得しなければならない」ということになり、世界のGAP認識とかけ離れていることを指摘されているのは、世界との交流があまりにも少なかったためではないかと思います。

 GAP普及ニュースでは、発行当初から、EU、特にイギリスやスペインのGAP事情を報告してきましたが、GAPの本質としての「持続可能な農業のあり方」や「農産物輸出の最低条件としてのGAP認証」などについては、国によってそれぞれの事情があり、GAPへの取組みの姿勢にもかなりの相違があることが分かりました。

 また、GAP(Good Agricultural Practice)は、農業管理が適正に行われているという意味ですから、農業経営体のスタイルによっても、GAPへの取組みの違いなどがあります。とりわけ日本の農業経営体は、家族単位の零細農家が多く、欧米の農場管理とはかけ離れていて、GAPも、そのまま真似て出来るものではないことも知りました。

 しかし、どの国にとっても、自国の農業をどのようにして発展させるかという視点で、GAPやGAP認証を考えているという点では共通です。そのような視点で、スペインのアルメリア(県)の農業には大変興味深いものがあります。36,000ヘクタールものビニルハウスがあり、冬場のEUの夏野菜を一手に引き受けて栽培している大産地ですが、農家一戸当たりの耕作面積は約1.5ヘクタールと小規模な家族経営体が農家数の90%を占めています。

 私は、2004年から定期的にアルメリアの農業をウォッチしてきましたが、本連載記事の表題通り「スペインには、日本でのGAP推進のヒントがいっぱい」です。特に、小規模家族経営農家の農産物を農協が取りまとめて販売しているというところも共通していて大変興味があります。

 このアルメリアは世界で一番GLOBALG.A.P.認証の農家数が多いところです。EUREPGAPの誕生にも大きく貢献した地域でもあります。そもそも、EUREPGAPの第一回会議は1997年に、このアルメリアで開催されました。GLOBALG.A.P.の事務局(ドイツのFoodPLUS)では、それから20年になるのを記念し、「記念誌」としてまとめているそうです。

 日本の農業が世界で認められるためには、「国際規格の壁は高い」というこれまでの誤解を解いて、農業関係者が正しくGAPとGAP認証を理解することが先ず必要です。そのためには、アルメリアに行って確認してくることが一番です。日本と同じように零細農家を組織している農協が、日本とは反対に、世界一のGAP認証の取得国となったスペインの現地に行って、現場をつぶさに見て、関係者と直接話してみることだけで、これまでの誤解は解消されます。

 「世界のGAP先進地スペイン研修ツアー」を企画しましたところ、早々に定員となる20名のご参加をいただきました。

  アルメリア地域農業を支える行政、研究所と関連農協・企業、生産・出荷・販売の現場を視察し、それぞれのキーパーソンと意見交換をします。世界最先端の「代替農業技術」と「小規模農業経営管理」に学ぶ経営技術力アップの研修です。

トマト
  • スペインは、国際規格のGAP認証農家の数が世界で一番多い国です。
  • 生産組合でも農協でも、GLOBALG.A.P.認証の取得率は100%です。
  • 「上位(持続可能な農業)のGAP」で差別化し、農産物の輸出額は大幅に増えています。
  • 農協や生産組合が取り組む農産物バリューチェーンで、生産者の利益が増えています。
  • エルエヒド、ギソナなどは、行政支援の農業クラスターにより地域人口が大幅に増え、農業で成功しています。

 このツアーではGAPが地域農業振興の切り札であることを確認します。また、GAPは難しいと思っている日本の農業関係者の誤解を解きます。

 次号以降は、世界のGAP先進地スペイン研修ツアー(1月29日から2月6日まで)の調査報告を兼ねて、最新の情報をお届けします。

2017/1


GAP認証で農業の差別化を図る
『環境の管理と保全に関する計画書』日本語訳 その3

 国際規格のGAP認証は、農産物取引の最低限の要件になっていますから、スペイン・アルメリアの農協では組合員のGLOBALG.A.P.認証取得率が100%で、取引上の優位事項ではありません。

 グローバル社会で競争になるのは、消費者に訴求力のある「サステナビリティ」(持続可能性への取組み)です。そのため、農協の連合会では「農場管理規則」のうち、「環境の管理と保全に関する計画書」を重要視してGAP指導に当たっているのです。

 欧州で最大の面積を誇る施設園芸産地のアルメリア県で多くの系列農協を持つ農協連合「UNICA」の「農場管理規則(Cuaderno de Campo 2013/9)」の「環境の管理と保全に関する計画書」(Plan de Gestion y Conservacion del Medio Ambiente)を日本語に翻訳して「GAP普及ニュース」に、その3を掲載します。

環境の管理と保全に関する計画書 2013年9月2日改定

3.農業生産の様々な側面

3.1.肥料

 植物の構成要素に関する研究によると、植物には少数のミネラル養分が大量に含まれている一方で、微量元素と呼ばれるものがごく少量含まれています。ケイ素、鉄、銅、マンガン、ホウ素、モリブデン、コバルトなどの微量元素はごく少量の場合は良いのですが、そうでない場合は植物にとって毒となります。

 植物にはそれぞれに必要な養分があり、それらが土中に存在しない場合は植物が健康に育つために足りない養分を補う必要があります。必要な養分は作物によって違いますし、収穫する部分がどこか(種、葉、根)によっても変わってきますし、どれだけの収穫が見込まれるか、土壌の質、気候によっても変わってきます。土壌中の有機物が増えるとミネラル養分の吸収率が上がることが経験的にわかっています。

  植物が最も必要とする三大養分は窒素、リン、カリウムです。窒素は作物の成長の初期で茎や葉が成長しているときに重要な養分で、作物の成長の後期にはその必要性は低下します。窒素は作物の収穫量に大きく影響する養分です。豆科の植物は大気中の窒素を固定することができるので、輪作に使用すると次の作物に必要な窒素分を提供してくれます。

  リンは作物中にごく少量含まれています。含有量は作物の部位によって大きく違います。リンの含有量は窒素の含有量と並行して増加し、作物の代謝と脂肪分の蓄積に大きく関与しています。リンは根の成長に貢献するので、その他の養分の吸収も助けます。リンは窒素ほどに茎や根の成長には関与しませんが、リンは窒素の働きを補充し、収穫物の成熟を促進します。作物の成長初期にはリンの吸収速度が速いので、この時期に水溶性のリンを作物に多く与えることが重要です。

  カリウムは作物の緑の部分に多く含まれており、過剰なカリウムは作物に害を与えます。作物の茎や葉が成長し始めた時が、カリウムが吸収されやすい時期になります。カリウムは葉の成長を助け、作物の根や球根の部分を大きくするのを助けます。カリウムの働きは窒素の働きと連携しており、窒素が蛋白質に変えられるのを促進します。カリウムはその他の養分の吸収も助け、植物の水分が蒸発で失われるのも防止します。これは灌漑用水の節約のためにも大切なことです。

  これらの情報をもとに、次の点が結論づけられます。

1) すべての作物が同じ養分を同じ量で必要としているわけではない。
2) 必要な養分量は作物の成長段階によって違い、一番必要な時期の直前に養分を与える。
3) 過剰な養分は作物にとってかえって害となる。

「環境の観点」からは次の点が重要です。

4) 肥料は作物がそれを必要とする直前のタイミングで与えるべきである。
5) 作物が必要としている養分だけを必要な分量だけ与えるべきである。
6) 必要以上の量を施肥した場合、作物に害を与えるだけでなく、後に土壌中に残った肥料の流出による地下水の汚染を引き起こす。
7) 肥料の効果は、土壌に有機物が十分にある場合によく発揮される。そのため、化学肥料だけではなく、堆肥を使用することが重要である。
8) 堆肥を用いる場合はその養分寄与を考慮し、化学肥料の施肥量を調整する必要がある。

3.2.農薬

 生産を維持し増加するため、一般に農場では作物に影響を与える害虫、病気、雑草には農薬を散布します。しかし、農薬は、病害虫による被害を軽減しますが、その他の環境汚染問題を引き起こします。例えば、新しい害虫の登場、生物多様性の損失、有効成分に対する病害虫の耐性の発生、農産物の化学物質の残留問題などがあります。

  ある農薬の使用が許可されるには、国や地域が管理する基準を満たさなければなりません。しかし、許可されている農薬でも、環境、人体、家畜、野生動物に危害をもたらしかねません。ですから、農薬の使用には最大限の注意を払い、ラベルに書かれている指示に従わなければなりません。

人体への危害

 農薬が人体に及ぼし得る危険性には物質の爆発性、可燃性、腐食性などがありますが、一番危険なのはその毒性です。農薬の毒性は法的に4段階に定められています。しかし、環境省に登録されている農薬一覧にはこの法的な段階分けと呼応しない段階表示(「低毒性」など)がされています。

 ラベルには毒性の段階が以下のように表示されており、吸引の際の危険性、誤飲の際の危険性、皮膚に接触した場合の危険性、なども表示されています。

「低毒性」:
 この表示は農薬の危険性を正確に表現していない。
「刺激性」:
 腐食性はないが、直接皮膚に触れたり、長時間または繰り返し接触した場合、腫れを引き起こす。
「有害性」:
 吸引、誤飲、皮膚への接触などがあった場合、必ず軽度の危害を引き起こす。
「高毒性」:
 吸引、誤飲、皮膚への接触などがあった場合、重度の危害を引き起こし、慢性的な中毒症状、そして死亡にも至りかねない。
「猛毒性」:
 吸引、誤飲、皮膚への接触などがあった場合、非常に重度の危害を引き起こし、慢性的中毒症状、そして死亡にも至りかねない。
野生動物への危害

 農薬が陸生動物と水生動物に与える危害のレベルに応じて、以下の分類がされています。

「カテゴリーA」:
 物質はほぼ無害か完全に無害で、野生動物に危害を与えない。
「カテゴリーB」:
 物質はやや有害で、その使用は特定の作物と特定の条件下に限られる。
「カテゴリーC」:
 物質は有害で、その使用は特定の作物と特定の条件下に限られる。ブドウ園、オリーブ園、穀物畑、豆畑、草地、草原、牧草地、森林、湿地、河川においての使用は禁止。

 結論として、農薬の人体そして野生動物に与える危害のレベルは3通りに表現されます。例えばトリフルラリン48%という農薬の毒性は「有害性」=人体や家畜に危害を与える、「A」=陸生野生動物に軽い害を与える、「C」=水生野生動物に深刻な害を与える、という3通りに表現できます。

 農薬は次の指示に従って散布されなければいけません。

1) 作物と対象病害虫に許可されている農薬を使用すること。
2) ラベルの指示に従って散布すること。
3) 殺虫剤やダニ駆除剤を使用する場合は、ミツバチに害を与えないものを選択すること。
4) 様々な農薬をただ試すのではなく、農場が直面している問題を解決できる農薬を厳選すること。
5) 作物、土壌、病害虫に応じて定められた既定の投与量を散布すること。
6) 収穫前の待期期間を厳守し、農薬散布直後に家畜が農場に入ることを防ぐこと。
7) 農薬散布後、農薬の空容器を少なくとも3回水ですすぐこと。洗浄に使用した水は水源に廃棄しないこと。
8) 公共の作物健康案内所では農薬使用に関する情報の提供を行っているので、そのサービスを活用すること。
農薬の代替法

 集約農業における大量の農薬と肥料の使用によって様々な環境問題が引き起こされ、環境の悪化を心配する生産者や営農指導員たちは、持続可能で多様でエネルギー効率の良い農業のやり方を模索し始めました。農薬と肥料を大量使用する農業から、そうではない農業への移行する場合は、以下のステップを通じて段階的に行わなければいけません。

第1段階)
 農薬使用の削減:農薬の使用をより合理化する。農薬を使用して収穫物の品質と収量を上げることによって得られる収入と、農薬の使用によって発生する出費と健康と環境への害を天秤にかけ、程よいバランスを見つける。
第2段階)
 総合的病害虫対策:化学農薬だけではなく生物農薬やフェロモンなどの代替法を積極的に使用する。農薬の使用に値する病害虫の被害レベルに作物が達している場合のみ、農薬を使用する。様々な方法を組み合わせた統合的な作物管理を行う。
第3段階)
 統合的作物生産:化学農薬や肥料の代わりに、作物生産や病害虫管理に貢献する自然資源を投入する。
第4段階)
 自然と調和した農業:外部から物資や資源を投入することなく、農場自身の中で資源をリサイクルしながら、土壌の肥沃性を保ち病害虫の抑制を行う。

 農場内に存在する生物多様性を保持することによって、害虫の天敵の存在が保たれ、病害虫が蔓延しにくい環境が実現されるのです。

2017/1


2016年度 シンポジウム・セミナーの予定

 2016年度のセミナーとGAPシンポジウムについて、新たに「農業向けHACCPセミナー」を開催することになりました。2016年度GAPシンポジウムと合わせて、奮ってご参加下さい。

 グリーンハーベスター農場評価システム(「GH評価制度」)では、農業者、農業指導員等による自主管理を推奨しています。

<農業向けHACCPセミナー新設について>

 この度、(一社)日本生産者GAP協会では、新たに「農業向けHACCPセミナー」を開設することになりました。GAPの主な柱として「環境保全」「食品安全」「労働安全」がありますが、農業者や農業指導者(普及指導員や営農指導員)の多くは、食品安全に関する専門的な教育を受ける機会がありませんでした。

 HACCPプログラムは、食品製造段階の衛生管理プログラムとして世界で最も信頼のあるものです。殆どの活動が自然生態系の中で行う農業において、全ての生産工程には適用できませんが、収穫以降の農産物は完全に食品取扱いであり、食品製造業者と同等の衛生管理が必要になります。食品販売事業者としてHACCPプログラムを理解し、実施することは必須です。農業者や農業指導者の方は是非ご参加下さい。

 特に、これまでに当協会が監修するGAP指導者養成講座を受講された方やGH評価員試験に合格された方は、その次のプログラムとしてお勧め致します。

 また、国際水準で最も普及している農場認証制度のGLOBALG.A.P.では、グループ認証における内部検査員の要件としてCODEX規格に基づくHACCPセミナーの修了を求めており、本HACCPセミナーはこの要件も満たすよう設計してあります。

 今回、農業向けHACCPセミナーの開設にあたり、日本のHACCPの第一人者であり、当協会の理事であり、大阪府立大学食品安全科学センター&微生物制御研究センターの客員教授(農学博士)である日佐和夫氏がセミナーのプログラムを監修しています。

時期シンポジウム・セミナー
2017年 2月

2016年度GAPシンポジウム
開催日: 2017年2月16日(木)・17日(金)
場 所: 東京大学弥生講堂一条ホール(東京都文京区弥生1-1-1)
定 員: 200名
受講料: 一般 15,000円、会員 10,000円、学生 2,000円 (税込)

3月

農業向けHACCPセミナー
開催日: 2017年3月23日(木)・24日(金)
場 所: つくばイノベーションプラザ大会議室(茨城県つくば市吾妻1-10-1)
定 員: 30名
受講料: 一般 32,000円、会員 23,000円 (税込)

2017/1


2016年度 GAPシンポジウム
テーマ『GAP実践と農産物バリューチェーン』

【開催趣旨】

 世界共通の課題である「持続可能な社会づくり」は、農業の価値観も変えることになり、グローバル社会で期待される農産物の品質も変化しています。EU夏野菜の基地であるスペイン・アルメリアの農業関係者は、これまでの「姿かたち、味、鮮度」に加えて、「農産物の特性、フードセーフティー、生産方法、トレーサビリティ、環境への取組み、社会的責任などの認証」が重要な要素であると考えています。そのために行う事は、生産者に対するGAP教育と、生産組織によるGAP農場の統一的管理です。農協では、最終利益の増大という目標に向けて、生産現場を含んだ全体を統合的に管理する「農産物バリューチェーン」を構築し、家族経営の枠を超えた組織としての一貫したコスト計算や、作業の機能配分の合理化などにより、「農業分野における最終利益を増大させる」ことを目標にしています。アルメリアと同じように零細農家がほとんどの日本の農業経営体が、どうすれば農産物バリューチェーンを構築できるのか、先進事例に学び、実現の手法について議論を深めます。

【開催概要】
日 時:2017年2月16日(木)10:50~17:30 / 情報交換会 17:30~19:00
2月17日(金)9:20~16:30
会 場:東京大学 弥生講堂 一条ホール(東京都文京区弥生1-1-1)
参加費:主催・共催・後援団体の会員 \10,000、一般 \15,000、学生 \2,000、情報交換会 \3,000
展 示:企業等による情報展示(開催期間中)
主 催:一般社団法人日本生産者GAP協会
共 催:農業情報学会、特定非営利活動法人水産衛生管理システム協会、一般社団法人GAP普及推進機構、特定非営利活動法人経済人コー円卓会議日本委員会
H  P:http://fagap.or.jp/seminarsymposium/sym201702/index.html
【プログラム】
16日のテーマ『日本で行う農水産物バリューチェーンの構築』
10:50~
・開  会: (一社)日本生産者GAP協会
・基調講演:「スペインで農産物バリューチェーンを探る」
 (一社)日本生産者GAP協会・理事長 田上隆一
・昼休憩/<情報展示> ・特別講演:「ロンドンオリンピックの食品調達基準"レッドトラクター"」 ~消費者の英国食品への信頼を回復するために~ 藤原百合恵(英国在住・:ビジネスコンサルタント)
<日本で取り組まれている農産物バリューチェーンの事例>
・講  演:「卸会社が取組む農産物バリューチェーン」
 ㈱ベジテック 徳留康幸/碧井真
・<情報展示>/休憩
・講  演:「人と海を結ぶ、新大船渡魚市場の建設」
 大船渡魚市場㈱ 専務取締役 佐藤光男
・講  演:「農商工連携による遠野まちづくりの実践」
 NPO法人 遠野山・里・暮らしネットワーク会長 菊池新一
・講  演:「農産物直売所から学ぶ新たな農産物バリューチェーン」
 ㈱みずほジャパン 井戸英二
・講  演:「スペイン視察ツアー報告」
 (一社)日本生産者GAP協会・理事事務局長 田上隆多
・情報交換会
17日のテーマ『GH評価制度に基づくGAP推進体制の構築』
9:20~
・講  演:「GH評価制度における教育プログラムとGH評価員試験について」
 (一社)日本生産者GAP協会 田上隆多
・講  演:「GAP実践の法則」
 (一社)日本生産者GAP協会 田上隆一
・事例発表:「栃木県におけるGAP推進について」
 栃木県農政部経営技術課 菊池克利
・昼休憩/<情報展示>
・事例発表:「岐阜県稲作経営者会のGH評価への取組みについて」
 岐阜県農業会議 松浦勇生
・事例発表:「若手普及員とJA営農指導員によるGH評価試験への挑戦」
 福井農林総合事務所 農業経営支援部技術経営支援課 菅江弘子
・事例発表:「生産者によるGLOBALG.A.P.内部検査の実施と販売戦略について」
 静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所 佐野英敏
・<情報展示>/休憩
・『全体討議(パネルディスカッション)』
 2日目発表者、司会:田上隆一
※内容につきましては、変更になる場合もございますので、その旨ご容赦下さい。
※講演内容、時間は進行上の都合により変更になる場合もございます。あらかじめご了承下さい。
※講演者の名前は、敬称を略させて頂きます。

2017/1


調和による最適化とGAP

小池英彦 一般社団法人日本生産者GAP協会 理事
長野県病害虫防除所

 「今後、農薬の価格は下がっていくのだろうか」と思いながら、冬場のこの時期、次年度向けの県の「防除基準」やJAの「防除暦」が作られていく様を眺めている。他の国と比べると、かなり高いと言われている農薬の価格だが、流通コストばかりではない別の日本的な価値が価格に反映されているのではないかとも考える。少なくとも私が主に関わっている果樹では、JAや農薬販売店は、それぞれの地域に調和し最適化された「防除暦」を作って提供しているので、農家は病害虫防除に関わる諸々の煩わしさから解放され、安心して農薬の選択やその散布時期を「防除暦」に委ねることができる。「防除暦」のような情報もタダで出来上がる訳ではないので、便利であるという価値が農薬価格に多少付加されても良いのではないだろうか。いずれにしても構造改革の行方に期待したい。

 さて、冬場というと、私の暮らしている寒地では農作物の生産は冬籠り状態で、大体は休止している。病害虫も一見、なりを潜めているが、このような餌になるものが殆どない圃場や園地の中でも、何らかの形で冬越しをして世代を継なければならない訳で、昆虫の種類によって、卵、幼虫、蛹、成虫のどれかの最適な形態をとっている。季節が冬に向かうにつれ気温が下がり、日が短くなるという変化を感じ、冬を乗り越える形態となるかどうか決める'装備'を昆虫は予め持っていて、この一つは休眠性である。この休眠は、概ね、日長によって制御されている。

 しかし、多様な昆虫の中には休眠性がないと言われるものもいて、写真1はその例である。冬が間近に迫った11月上旬、りんごの苗木の葉上で死んでいるハスモンヨトウの幼虫で、寒さに対応した装備を持ち合わせていないため、冬の寒さに対応できず凍死していた。地球上には冬の寒さがない所もあるので、ハスモンヨトウのような冬を越す装備が不要なものがいることは不思議ではないものの、世代をつなげないことが分かっていながら寒冷地や寒地にまで進出してくるのかは疑問である。危機管理ができていないと言うことかもしれない。

 ただ、このような身一つでは冬を越せないハスモンヨトウでも、暖かいハウスの中にたまたま潜り込めれば、その環境に調和して適応することによって運よく生き延びる場合がある。冬場、ぶどうの二期作栽培や超早期加温栽培のハウスでハスモンヨトウが旺盛にぶどうの葉を食べている被害を見た経験がある。ハスモンヨトウとは違い、もう少し環境に調和している例を写真2に示す。ワタアブラムシである。ワタアブラムシは、通常、寒冷地では卵で越冬し、親の姿でも凍死するほどの寒さにならない所では、越冬しているホトケノザやオオイヌノフグリなどで生き延びて、世代を継ぐという二つの選択肢を持っていて、ハスモンヨトウより危機管理ができているように思われる。

 写真2は、寒冷地でも、冬場に加温されたハウス内では雑草が生えていて、そこで生活していたワタアブラムシではあるが、園主が除草剤を散布したため雑草が枯れ、生き場を失って、他の拠り所としてぶどうの房に移って落ち着いているところである。生き延びる戦略として、うまい具合に環境に調和して適合している。もっとも、ぶどうの房に移った彼らは殺虫剤により処分されたことは言うまでもない。

 私は、ぶどう畑を挟む農道を使って通勤している。途上には、通るごとに注目しているワインぶどうの「メルロー」の園地があり、仕事がてらに房の出来具合や病害虫の発生がどうか、しばしば観察している。ワインと言えば、目下「日本ワイン」の興隆が凄い。ワイン醸造までを念頭においたぶどう栽培への新規参入者は数多く、山梨県甲州市では「甲州市原産地呼称ワイン認証制度」で原料ぶどうの出自を明確化させたワイン認定を試みている。また、長野県ではNAGANO WINEとして振興を強化している。

 私が観察している「メルロー」であるが、これはワインぶどうの代表的な品種であり、高級な赤ワインになる。昨年は、私の見ていたところ、一昨年の小房で結実もそれほどではなかった状況と比べると、とても豊かな実りを期待させる出来具合であった。写真3のとおりである。ところがその後、房の状態は日を経るにしたがって暗転していった。写真4のとおりである。お盆過ぎ以降、天候不順となった多雨により、ぶどうの果粒が腐るブドウ晩腐病(おそぐされびょう)が発生してしまった。この園地は非常に良く手入れされているのが見て判っていた。なので、農薬散布などの病害虫防除は適切に行われているだろうから、大丈夫であろうと高をくくっていたので、ほぼ全ての房が腐ってしまった状況には大変に驚かされた。一つ、明らかに前の年と違うことがあった。それは、「傘かけ」が行われていなかったことである。「傘かけ」は、房に雨が当たらないようにして病原菌の感染を少なくすることや、鳥獣被害を防ぐことが目的であり、特にブドウ晩腐病の予防のために行なった方が良い。聞くところによると、園主は何らかの理由で途中から耕作を放棄し、収穫期近くに今後の管理を他者へ委ねたとのことであった。ブドウ晩腐病による被害を減らすGAPとして行われるべき「傘かけ」が行われず、最適化された順調な栽培経過の調和が乱された結末と思える。

 調和がとれ最適化された状態は、ちょっとしたさじ加減で乱れるものの、危機管理によって修正され、最適化された状態に戻すことができる。昆虫の生き様は、生来持っている本能的な機能を変えることができないので、日和見的だが、農業ではGAPがその一連の流れを司って最適化された状態を保つ役目を果たすと考えられる。先に触れた防除暦、GAPの実践で、より洗練されたものに進化していくのではなかろうか。

2017/1


GAPの視点から見た稲作農場の改善点

山田正美 一般社団法人日本生産者GAP協会 常務理事

 稲作を中心に営んでいる農場にとって、秋の収穫が終わると一段落というところが多いと思います。昨年(2016年)は11月から12月にかけてGH農場評価で稲作農家を訪れる機会が何度もありました。その時に評価させて頂いた内容から、改善すべき共通の内容が見えてきましたので、今後のGAP指導の参考にして頂くことを念頭に、その概要についてご紹介させて頂きます。なお、GH農場評価制度については(一社)日本生産者GAP協会のホームページをご覧ください。

1. 農場管理システムの妥当性

 この管理項目に分類される評価項目には、圃場マップや緊急時マニュアルの準備など経営全体に関係するものが20項目ほど入っています。その中でも改善を必要とする項目として「リスク評価」、「緊急時の対応手順と周知」「クレーム対応と商品回収手順」「残留農薬分析」が挙げられます。

 「リスク評価」というと難しいように感じられるかもしれませんが、要は「環境汚染」や「農作業事故」「食の安全」を脅かすような問題が生じないようにするため、どこに問題があり、どう改善したらそのリスクを減らせるのかを考えることです。常識的なことは、皆さんは既に理解しておられるのですが、問題点を文書にしたり、地図に落としたりするところまではされていないというのが現状です。問題点を文書や地図に落とすことで、問題を作業者全員で共有することができるようになります。

 「緊急時の対応手順と周知」では、何か事故があった時、どのような対応をしたらよいのかを事前に示しておかないと、対応が遅れることになります。作業者の目につくところに掲示しておくことが重要となります。

 「クレーム対応や商品回収手順」では、めったにないことかもしれませんが、クレームがあった場合に「誰が対応するのか」、万一商品を回収しなければならない場合には「どのように回収するのか」という手順が定められていないことです。ただし、農産物を出荷した先でクレーム対応している場合は該当外となりますが、自分で直接販売している場合は、しっかりと手順を決めておく必要があります。

 「残留農薬分析」も、農産物の出荷先で対応している場合は問題ないのですが、自分で直接販売しているような場合には、販売した農産物が残留農薬基準値をクリアーしていることを示せなければなりません。そのためには、科学的根拠に基づいたサンプリングをして分析値が問題ないことを確認しておく必要があります。

2. 土壌と作物養分管理

 この管理項目は、作物栽培の基本となる土壌と養分に関するもので、生産物の収量や農産物の品質に直結することから、適切に対応している項目が多く、問題となる評価項目は少ない傾向にあります。それでも、農場で使用する「水のリスク評価と対策」や農場の「土壌管理計画の作成」については、多くの農場にとって改善の余地がある項目でした。

 農場で使用する「水のリスク評価」では、自分の圃場で潅漑に使用している水が本当に問題ないのかどうかを確認しているかということです。問題がある場合は恐らく少ないと思いますが、それを「確認しているかどうか」ということが重要となります。例えば、用水組合で水質を分析したデータを確認しているか、自分の圃場に来るまでに工場排水や家庭排水が流入していないことを確認しているかということです。確認さえしてあれば、安心して使うことができます。

 もう一点の「土壌管理計画の作成」ですが、ほとんどの農場主は、圃場毎の前作の状況や土壌の特徴などが頭に入っているのですが、「文書として残していない」ということが問題となります。文書化して作業者が共有できるということが大切になります。

3. 作物保護と農薬の使用

 ここでは「環境に配慮した病害虫防除」や「農薬の安全な使用」などの項目が含まれています。特に不適切な管理によって環境汚染の原因となりやすい農薬の使用に関しては、問題点が多くみられました。

 農薬が水路に流れ出ると大きな環境問題になりますが、農薬の調合時に万一流出した場合や、散布後の散布機の洗浄で排出される残留液が水路に流れ出ることに気を使っている人が実に少ないことが分かりました。農薬が水路に流出する危険がない安全な場所での取扱いについて徹底していく必要があるでしょう。また、こうした農薬の残留液は、非農耕地で、周りの作物に影響のない所へ窪地やドレインを作り、そこに浸み込ませるという方法が一般的です。その場合、廃棄場所に立ち入らないようロープで囲むなり、立入禁止の表示が必要となります。

 「農薬の安全な使用」で気を付けることとして、ドリフトの問題があります。隣接圃場の作物に農薬が飛散するリスクを最小限に抑える方策が十分とられていない場合が多いようです。

4. 施設資材と廃棄物の管理

 この管理項目には、種苗の管理、肥料の保管、農薬の保管・廃棄、燃料の保管、廃棄物の管理が含まれます。

 最も問題になるのは、「農薬の保管・廃棄」です。農薬が農作業小屋の一角に置かれていたり、あちこちに置かれていたりする事例が多く見られ、鍵の掛かる保管庫にまとめて保管しているのはごくわずかという実態でした。誰でも触れるところに置いてある農薬は、交差汚染の原因ともなり、農産物を汚染する可能性もあります。

 「種苗の管理」では種苗に用いた農薬の記録票を保管していないというのがかなり見られました。

 「肥料の保管」では、肥料が収穫物や農薬と一緒に保管されている事例が多くみられ、確実にこれらと分けて保管する必要があります。

 「燃料の保管」においても充分とは言えません。乾燥機やボイラーの燃料タンクの場合は、導入した時に防油堤を設置するケースが多いのですが、軽油をドラム缶で保管しているような場合は、防油堤がなく、火気厳禁の表示や消火器が設置されていないケースが大半でした。

 「廃棄物の管理」に関しては、廃プラスチックや農薬のプラスチックや金属の空容器などはJAの回収で処理しているのですが、粉剤の入った紙容器や段ボール箱などを空き地で焼却している事例が多くみられました。市町村条例によって野焼きは禁止されていますので、適切に処理する必要があります。

5. 農産物の安全性と食品衛生

 この管理項目で不十分であった項目は、「収穫・調整等に関するリスク評価の文書化と対策」「衛生管理の手順書と掲示」「作業所での喫煙の制限」「ガラス等の異物混入対策」でした。

 これまで指摘したとおり、経営者の頭の中で「どこにリスクがあるか」を把握していても、文書化されていないことが多く、収穫・調製・保管・包装のリスクに関しても同じような傾向が見られ、ほとんどの農場で文書化されていません。衛生管理の手順についても同じです。

 喫煙者がいる場合には、農産物や燃油に影響のない決められた場所で吸うようになっているところはまだ少ないようです。適切な喫煙場所を設ける必要があります。

 ガラス等の異物混入では、調製室内の農産物の上にある照明、特に蛍光灯が飛散防止タイプでないものがほとんどでした。

6. 労働安全と福祉の管理

 この管理項目では、三点ほど指摘させて頂きます。特に危険な場所での「事故防止のための表示や対策」、「作業に適した防護装置の着用」、それに、農薬の希釈や散布の際の「ラベルの指示に従った防護用品の着用」です。

 最初の危険な場所での「事故防止のための表示や対策」ですが、天井クレーンがあるところや、上から物が落ちる可能性のあるところでの「頭上注意」などのサインやトラテープを使った危険個所の表示なども有効になります。また、フォークリフトなどの機械を使う場面や高所作業ではヘルメットの着用が推奨されますが、ヘルメットを用意している農場が少ないという現実があります。また、農薬の調合や散布におけるゴーグルやマスク、手袋の着用では、散布の時は着用していても調合の時には着用していないというも判りました。

7. 環境保全と生物多様性の保護

 この管理項目に関しては、特に指摘するべき問題点はありませんでした。

 以上、私が最近GH農場評価を初めて受けるという稲作農場に行って感じたことです。これからGH農場評価をしていこうという方、またGAPの視点から農場の改善を目指していこうとしている方の参考になればと思います。

2017/1


株式会社Citrus 株式会社Citrusの農場経営実践(連載25回)
~和歌山県内の中小企業内で話題に~

佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役

 平成28年11月1日に和歌山市内のホテルで開催された平成25年度補正中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業成果事例発表会に「食品乾燥機を用いた無添加ドライフルーツ・ドライベジタブルの製造」と題して事例発表した。内容は本誌44号連載17でご報告した弊社の6次産業化への取組み実績である。発表会には県内中小企業100社あまりが出席していた。この事業に弊社を含め和歌山県内で151社が採択された。採択率は30%と言うから県内の多くの中小企業の応募があったことが覗える。平成25年度補正予算の事業実施期限が平成27年9月30日で、弊社もぎりぎり期限内に完成した。一般企業なら工作機器や製造ラインを合理化するためのバージョンアップ機器の導入が実施内容のようで簡単なわけですが、弊社にとって食品加工は全く新しい試みであったことから、どんな商品を生産するか、また、加工するために何を合理化できるのかなど、すべて想定しながらの申請でした。幸い、農林水産省の総合化計画の認定を受けたときの6次産業化への目標があったので、それをこの事業用にアレンジしたことが採択につながったと思われる。今回の発表に選ばれたのは、その申請内容や実績が事例集に紹介され、一般の中小企業とは違っていたので、事務局サイドから発表社に選ばれたようであった。

  事例の発表社は4社で、弊社は3番目であったことから、前座の発表が自社の製品ブランドの特徴など事細かな内容であったことから、弊社が準備していた内容を変更し「優秀な人材が育つ企業を目指している」と大きくまとめてみた。終了後、保険会社の方から「内容が判りやすかった」とお世辞かもしれませんが、激励をもらった。

  和歌山県中小企業団体中央会は、この事業の事例集を今年10月に完成させている。編集したのは、委託を受けた株式会社帝国データバンクで、弊社もこの会社の記者から取材を受けた。

  この事例集には、県内の採択を受けた内の32社が事例として紹介されている。今回のニュースの記事として、その帝国データバンクがまとめた弊社の紹介記事をそのまま記載してみる。

2017/1


GAP関連用語の解説
『惣菜半製品』

調査広報委員会

 昨年11月に「惣菜半製品」として販売された加熱調理前の冷凍メンチカツを原因に、腸管出血性大腸菌O-157による食中毒が発生した。 「惣菜半製品」とは、衣だけを付けたトンカツ、メンチカツコロッケや、加熱前の餃子などであり、簡単に家庭で味わえるとして広く普及している。「生に近い加工品」である「惣菜半製品」は、スーパーなどで冷蔵や冷凍の状態で販売されているが、「惣菜半製品」はあくまでも「惣菜」であり、冷凍されていても「冷凍食品」ではない。冷凍食品は、保存温度や細菌数の上限などが国の規準で厳密に定められているが、「惣菜半製品」にはこのような規制はない。今回問題になったのは、「惣菜半製品」の中に生肉を原料にした未加熱製品が入っているからである。 「弁当及び惣菜の衛生規範」における未加熱品は、「サラダ、生野菜等の未加熱処理のものは、検体1gにつき細菌数(生菌数)が100万以下であること」とあり、これはあくまでも生野菜の製品を前提としており、腸管出血性大腸菌のような僅かな汚染でも致命的な中毒に至る肉製品については、想定されていない。食中毒を起こす危険性がある「惣菜半製品」は、最終的な加熱調理が店舗や家庭においてしっかり行われることを前提に販売されているものであり、今回のような中毒の発生が危惧される以上、何らかの対策が必要である。 「惣菜半製品」については、冷凍で売られていても、冷凍食品ではないので、喫食前にしっかり加熱する等の然るべきルールの整備がなされる必要があろう。

2017/1


編集後記

食讃人

 新春のお喜びを申し上げます。

 昨年は予想できないことが次々と起こりました。ちなみに一昨年は、パリ・ロンドン等の連続爆弾テロ、COP21でパリ協定合意、中国が南沙のサンゴ礁を埋め立て軍事基地化? TPPの基本合意で中韓企業がベトナムへ、中国主導のAIIBに日米不参加、欧米ロのIS攻撃により欧州へのシリア難民が急増、ギリシャ等の欧州経済危機、原油価格35ドル割れ、VWの排ガス規制不正、米国とキューバの国交回復などでした。

 昨年は、一昨年の動きを打ち消すようなビッグニュースばかりです。暴言を吐く泡沫候補のトランプ氏が次期大統領に当選し、米ロが和解? TPPやパリ協定から離脱? 英国がEU離脱を決め、ドゥテルテ氏がフィリピン大統領になり、中国と和解、イランの経済制裁解除、台湾に女性総統、蔡英文総統がトランプ氏と電話会談で中国が激怒、韓国パク・クネ大統領の弾劾可決、ミャンマーのスーチー氏は大統領になれず国家顧問に、国際仲裁裁判所は南シナ海

 での中国の主権認めず、米国が8年ぶりに利上げしトランプ相場でドル急騰、OPECが原油の減産に合意しロシア等も追随などなどです。

 今年は、中東はどうなるのでしょうか。メキシコやキューバはどうなるのでしょうか。

 欧州の爆弾テロがアジアにも拡散しましたが、一昨年のような驚きはありません。シリア・イラクではIS壊滅作戦が続いています。

 今年はトランプ氏が大統領になり、ロシアと和解したり、北朝鮮と電撃和解したり、米中関係も見直されるかもしれません。TPPはアメリカが離脱して日本主導になるかもしれません。このようなことが予想の範囲に入ってきたこと自体が全く予想されなかったことであり、世界は益々不透明感を増していると感じています。

 そのような中で、重要さが変わらないのは食糧問題です。世界の食糧増加率が年々減り続けており、人口増加に見合う食糧生産の余剰が年々少なくなっています。その背景には、(1)着実に増え続ける世界の人口増加(毎年7000万人)、(2)途上国の経済発展と肉食化、(3)頻発する異常気象とそれによる気象災害(旱魃・洪水、巨大台風等)、(4)主に途上国の都市化等に伴う耕地面積の減少、(5)単収の減少などが挙げられますが、食糧問題として見直しが必要なのは、主に先進国で食べられずに捨てられる「食品ロス」であり、途上国の収穫・輸送中に変質し捨てられる農産物の「収穫後ロス」です。欧州や日本では、この「食品ロス」が膨大な量になっており、この問題を解決し、食料を安定確保することが緊急かつ重要な課題になっています。

 フランスでは、昨年、スーパーで売れ残った食品の廃棄を禁止する法律ができ、この「食品ロス」をうまく活用する方法が機能しつつあります。世界の食糧生産と同時に、途上国の「収穫後ロス」の削減と、先進国の「食品ロス」の削減は、食料危機を回避し、人類がより長く生き延びる方策であると言えます。この前提として、農業生産を持続させる環境をどのように保全していくのかは、人類共通の課題であり、今まさに問われている問題です。

 新しい年の初めに、食糧問題の重要性と環境保全の重要性を改めて考えたいと思います。

 また、民族・部族間の対立や宗教の対立が、武力闘争に発展すると、それに大国の思惑が加わり、シリアのような激しい破壊が起こり、大量の血が流されます。シリアのアレッポの廃墟は、人類の負の遺産として私達に訴えかけています。

先進国・開発途上国別人口の推移の見通し)
世界の食糧・飼料と穀物需要の推移と見通し

(左)途上国の人口はどんどん増え、(右)食糧は食用と飼料に使われ、家畜用飼料の伸びが著しい。

2017/1