-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

『GAP普及ニュース 巻頭言集』

 普及ニュースに掲載された、有識者による巻頭言。

『農水産業の食品安全と持続可能性』

GAP普及ニュース41号(2015/1)掲載

鈴木迪雄
NPO法人 水産衛生管理システム協会 理事長

 田上理事長との出会いで一番印象に残っていますのは、2006年1月19日に、一緒に中国の北京に行ったときのことです。合計で4回ほど田上さんとご一緒しましたが、当時、北京オリンピックが開催されることが決まり、中国政府がオリンピックへ向けて、その食料調達をどうするかを考えていた時です。その時の目的は、北京オリンピック大会が開催される2008年の夏に向けて「オリンピックで提供される食品の安全・安心をどうするか」ということと、「GAP認証の国際標準への対応をどうするか」ということについて日中双方が協議することでした。

 2008年夏にオリンピック開催を控えて、中国では国を挙げて食の安全対策を進めている時でした。私たちが参加した人民大会堂での「中国農業経済産業国際会議」では、北京オリンピックで提供される食品の安全をどう担保するか、それを目標にして中国国内の農業の振興と農村の発展をどうするか、などが主なテーマでした。

  金網で囲まれた北京近郊の農園でオリンピック用の農産物が生産される様子が日本のテレビ番組で紹介されたりしていましたが、結局、「食品の安全性が担保されない」ということで、多くは輸入食材が使われることになったと聞いています。

  その後、2012年のロンドンのオリンピック大会では、サステナビリティ(持続可能性)への取組み体制が整い、食品の「安全確保」だけではない先進国型のオリンピックにおける「安全・安心」対応が形作られました。その概念と規格は世界標準となり、今ではISO20121として一般化しています。次は2016年のリオデジャネイロ大会です。このオリンピック大会の委員会でも、サステナビリティをロンドン大会に学びながら、持続可能な水産物認証の採用を発表しています。

  いよいよ次は2020年の東京オリンピックです。東京大会では、「先進国型のサステナビリティを最も厳しい基準で実現する」と立候補ファイルでも宣言しています。水産物においてもサステナビリティは「大きな問題である」と認識しています。GAPでは、日本生産者GAP協会の皆様方のご努力で、生産者への対応を的確に行っておられますが、漁業では農業のように上手くは進んでいません。

  今後は、日本におけるサステナビリティ(持続可能性)とフードセイフティ(食品安全)の理解が進むよう、水産のAQUQM(水産衛生管理システム協会)と農業のFGAP(日本生産者GAP協会)が協力して推進していきたいと考えております。

  よろしくご支援の程、お願いいたします。

GAP普及ニュースNo.41 2015/1