規範
「日本適正農業規範(暫定版)(案)」に対する意見(パブリックコメント)の報告(PDFファイル)
一般社団法人日本生産者GAP協会
この度は、「日本適正農業規範(暫定版)」(案)につきまして、貴重なご意見をいただき誠に有難うございました。いただきましたご意見への対応につきましては、下記の通り取りまとめましたのでお知らせ致します。
なお、皆様からのご意見などにより修正した「日本適正農業規範」につきましては、4月21日、22日に開催されます「第23回食・農・環境の農業情報ネットワーク全国大会:2011年春期GAPシンポジウム」にて公表する予定にしております。
- 意見の募集期間
- 平成23年1月25日(火)から2月24日(木)まで
- 意見の募集方法
- ・ホームページへの掲載(掲載ホームページ:一般社団法人日本生産者GAP協会のホームページ)
- ・関係部署への案内文書の郵送(郵送先:農林水産省関連部署、農政事務所、都道府県のGAP・環境担当部署、環境省関連部署、関連独立行政法人、農林系特殊法人等、JA全農・経済連、JA中央会、農業大学校など)
- ・関係者に電子メールにて案内文を送付(送付先:FGAP会員、GAPシンポジウム参加者、都道府県・農協等のGAP担当者などを中心 に約1,500名)
- 応募者数
- 14人(応募方法:電子メール13人、FAX1人)
- 応募者の内訳
- 国の機関(1)、都道府県(4)、大学(3)、財団法人(1)、社団法人(1)、JA(1)、民間(3)
- 意見総数
- 33件
- パブリックコメントにより提出された意見等(要旨)とそれに対する考え方と対応 (表1)
番号 | パブコメ暫定版の頁番号 | 分野 | 意見等(要旨) | 意見に対する考え方と対応 |
1 | - | 全体 | GAP導入を効果的に進めるためには、日本においてもEUに準じた制度設計が必要だと思います。本案が実効を上げるためにはGAPの検討と併せて国に対する具体的な制度設計に向けた働きかけなども必要ではないでしょうか。 | EUのGAP規範は、環境保全を中心にしたものであり、当協会の提案しているGAP規範は、日本の事情を考慮して、環境・人・農産物(食品)に対するリスク低減を目指したものにしています。効果的なGAPの推進には、国による制度設計と政策による推進が重要と考えていますが、少しでも早くGAPを進めるためには、県などの地方自治体や民間団体による取組みも重要と考えています。 |
2 | - | 全体 | 食品添加物や保存料、収穫後の流通履歴などについての認知度を向上するため、履歴管理を強化すべきである。生産規範や生産履歴とともに、加工・輸送・流通段階での品質管理を把握する、フードチェーンを意識したGAPの理念でありたい。 | この日本GAP規範では、主に農産物が農場の門を出るまでの農場における管理作業を扱っています。農場を出た後の食品の加工・流通などにおける履歴管理には、全てのサプライヤーによる責任あるトレーサビリティー要件を実施するなど、一貫したフードチェーンが重要であると考えています。 |
3 | - | 全体 | 農場の対象作物以外の植物(草木・花・雑草)や生息する野鳥・小動物などを明記する仕組みが必要ではないしょうか。 | GAP規範を遵守した農業を実践することは、主な対象とする農産物以外の自然生態系の保護にもつながると考えています。生物多様性の保護もGAPの非常に重要な要素と考えています。 |
4 | - | 全体 | GAPを推進するに当たっては、流通業者や消費者への理解促進、考え方を変えさせるための教育や法整備が必要ではないか。また、農家が確実に実行可能な技術的支援なども必要ではないか。 | ご指摘いただいたように、普及のための教育や法整備が今後必要になってくるのではないかと考えています。また、環境保全型農業生産システムの確立のための技術的支援も重要と考えています。 |
5 | - | 全体 | 「日本適正農業規範」の実行を担保する方策について以下の内容を含め、新たに一章を追加するべきではないか。①食品安全、環境保護、国土の保全などは農民だけでなく消費者を含む国民全体で確保していかなければならない課題との認識。② コストは、財政負担による支援あるいは産品の価格への転嫁によって負担。③ 財政による負担は、GAPに参加する農家の認定制度を設け、認定農家に対する直接支払いの割増支払いなどが必要。④ 認定制度の導入には、現在の幅広いGAP規範の絞込みを行うべき。農業タイプごとも考えられる。以上のような実行の方策は、これから農業政策が大幅に改正されると思われるので、新たな農業政策として位置づけるよう政府に提案していくべきである。 | 「日本GAP規範」の実行を担保する方法については、直接この規範の内容にするにはそぐわないと思いますが、この規範を今後普及・推進する方法として、参考にさせていただきます。 |
6 | - | 全体 | 多くの文献を引用して規範を作る方法については特に異論はありません。この方法を採用するときには二つのポイントがあります。第1は文献を読み、要約する場合の思想的あるいは理論的な根拠を明確にすることです。このためには日本の食糧とそれを生産する農業、場合によっては農山漁村のあるべき姿に対する考え方を整理する必要があります。従って、食料と農業の関係者が一堂に会して議論することが必要ですが、わが国にはまだそのような組織はありません。第2は文献を読み、それをGAP規範にリライトする多くの専門家です。少人数では読込みが不十分な場合もありますので、関係分野からの人選が必要です。この体制あるいはこれに準じた態勢で検討したものがはじめて『日本』という冠をつけた『規範』になり得ると思います。以前、GAP規範(素案)を作るより、この体制の事務局を貴協会が担当するよう、農水省等に働きかけてはいかがかという提案をさせていただきましたが、今回の『暫定版』になってしまいました。先にも書きましたが、『日本』という冠をつけた『規範』には程遠いように思います。全体の見直しをお願いします。 | GAPは、環境汚染を如何になくすか、生産者・消費者等に対するリスクを如何になくすか、低減するかにあります。これは、農業生産者に課せられた大きな課題です。現在、農家や農山漁村は経営が成り立たず、後継者がおらず、崩壊の危機にあります。地下水は飲めなくなり、湖沼の汚染は年々酷くなり、茨城県は霞ヶ浦・北浦の水質浄化のために税金をとるようになっています。中山間は言うに及ばず、恵まれた農業地帯でも耕作放棄地は年々増加しています。現在、私達を取り巻く環境は悪化の一途を辿っているという現状認識が背景にあります。国として、日本農業のあるべき姿、進むべき方向を示し、農業の構造改善による農業生産の確保や環境保全を本格的に進めなければ、手遅れになってしまうのではないかと危惧します。私達は、この危機意識からGAP規範とその普及に取り組んでいます。また、GAP規範の作成に当たっては、私達の考え方に賛同していただいた多くの専門家に参加していただき、ご意見を伺いながら進めてきました。規範の名称に関して、民間であっても、日本のものは「日本」とつけて全く問題ないと考えています。そのような例は他にもあります。 |
7 | - | 全体 | 持続型農業・環境保全型農業・適正農業規範の一連の農業政策は、現在の地球上の人口が65億人を超え、また地球環境の気象異変をまず念頭に置いて作成すべきです。これまでの従来型の土壌や河川水に依存した農業政策では色々の問題は解決できないと思われます。そのため、農業関連の規制を排除して、農業生産体制を工業化して自然の種々の問題を打破すべきではないか。 | 現在の農地を使う農業から天候に左右されない工業型の施設農業へ移行するには、コストやエネルギー効率などの解決すべき課題もまだまだ多く、一気には進まないと思われます。私達は、私達の住む自然環境を守りながら、持続的に農業ができるようにすることを第一義的に目指しており、このような方向で安定的な食料生産を可能にすることが先ず重要であると考えています。 |
8 | p6 | はじめに | 「はじめに」を規範の本文に掲載するのは不適当と考える。適正農業を実践する思想的な背景は、総論および各論の書き方で示すべきではないか。 | 今回、日本で初めての「日本GAP規範」を発表するに当たり、その背景を「はじめに」で説明することは、読者の理解を深めるためにも重要と考えています。 |
9 | p10 | はじめに5節 | 本文中に『EU、特にイギリスなどでは「適正農業規範は、政府が規定したGAP 規範」を指し、スーパーマーケットやその他の小売業団体などが作成した「農場認証制度」は、政府のGAP 規範を考慮して「食の安全や品質に注力した仕入基準」として明確に区別しています。』とあり、これは原則として正しいと思いますし、規範委員会もこの方向が妥当であると考えて記載したことと思います。これは「スーパーマーケットやその他の小売業団体などが」を「生産者が」と代えても成り立つ論議です。「スーパーマーケットやその他の小売業団体」などは農畜産物の購入という行為で農業規範の順守を求めることができますが、生産者は適正農業規範の実践にあたっての所得補償等のバックアップは、自らはできません。デカップリング一つとっても、そのための法整備、予算措置は政府がやるべきことで、生産者や一社団法人のできる範囲をはるかに超えています。従って、今やるべきことは「政府が規定したGAP 規範」の成立を促進することです。勝手に「日本」という冠を付けた「適正農業規範」を作っても何も変わりません。 | 環境汚染の現実を見ると、農業地帯の地下水や一部の閉鎖系湖沼などでは水質汚染が進行しており、農業系の面汚染源からの汚染負荷も相当なものがあり、その回復は喫緊の課題です。また、環境問題だけでなく、日本では農作業事故が高レベルで発生していることや、農産物の安全・安心を脅かす問題などに生産者が日常的に対応しています。農業者の生産活動の各場面で直面する「何が問題なのか」「なぜ問題なのか」「問題の根拠は何か」「問題解決のためにはどうすれば良いか」などの様々な疑問に応えるために、これらの指針となる「適正農業規範」の構築が強く求められています。このような地域の要望に応え、早急にGAP規範を構築する必要性を感じ、一般社団法人である私達が中心となり作成しました。民間でも政府でも、気づいたところがやり始め、お互いに連携しながら進めていけば良いのではないでしょうか。ちなみに、広く普及しているISOは民間の運営です。必ずしも政府だけが「規範」を作るものではないと考えます。なお、「適正農業規範」を地域で活用するだけでなく、国として推進するには、法整備や予算措置を政府が行うべきことはご意見の通りであると考えます。規範の名称に関して、民間であっても、日本のものは「日本」とつけて全く問題がないと考えますし、日本と書かないと、どこの国のものか判らないと思います。 |
10 | p11 | はじめに5節 | GAPに関する全ての項目は,「農業経営の持続性(継続性)」に帰結するため、「農業の持続性」を最上位に置き、「環境保全」「食品の安全性」「労働安全」「品質管理」などは同列にされてはいかがでしょうか。 | GAP(適正農業管理)の取組みは、農場における活動で発生する「環境」、「人」、「農産物(食品)」に対するリスク認識のもとでリスク評価を行い、そのリスクを可能な限り小さくすることであり、その結果として農業の持続性に結びつくものと考えます。上位、下位と位置付けられるものではないと考えています。 |
11 | p22 | 1章4節 | 農業経営主の責務で知的財産の保護に関しての記載が必要かと思います。 | 農業者自らが開発した知的財産の保護は、個人や産地における権利の保護の観点からは重要です。しかし、環境保全、作業者の安全、農産物の安全という面が中心のこのGAP規範には必ずしもそぐわないと考え、対象にしていません。 |
12 | p37 | 2506 | 根粒菌により固定された窒素は、アンモニア態窒素になるようですので、土壌の窒素分析の際の注意が必要ではないか。 | 大豆に共生する根粒菌は、空中の窒素ガスを固定してアンモニア態窒素として大豆に吸収されることはご指摘の通りです。通常の大豆の施肥基準などは窒素固定の効果も踏まえて作成してありますので、参考にして下さい。 |
13 | p56 | 4章2節 | 圃場管理も大切ですが、適切な種苗の選択等も重要な観点かと思います。種苗の適正な使用についての項目も入れるべきと思います。(「種苗登録制度の遵守」等として) | 種苗に関しては、4201と4202に記述してありますので参考にして下さい。 |
14 | p57 | 4章3節 | 通常の露地栽培での肥料利用率は20%程度と聞いているのに対し、養液栽培の肥料利用率は80%以上で、水質汚染への負荷の少なさは養液栽培の方が優れていると認識しています。直接排水を放流するので目立つが、さらなる検討をお願いしたい。 | 露地栽培の畑地での肥料成分、特に硝酸態の窒素は、地下水などの水質汚染の原因となり、このGAP規範の中でも地下水汚染を防ぐための適正な量の施用や土壌の管理などを示しています。それと同じく、養液栽培の排液の河川などへの放出についても、水質汚染の原因となるので、その負荷量をできるだけ減らすよう示しているものです。 |
15 | p65など | 4章 | 農家自らが行う洗浄、カット、リパックなどの加工処理なども農場管理の一部とし、明確に規範にルール化すべきではないか。 | 第4章の「農場の施設・資材管理」や第8章の「農産物の安全性と食品衛生」に、農家自らが行う収穫後の洗浄、選果、調製、梱包、保管等についての留意点が記述されています。 |
16 | p88 | 6305 | 畜産環境アドバイザーは、家畜糞尿処理施設の設計審査に係る人材であり、豚や鶏の野外飼育について助言できないのではないかと思い、最後の行の「畜産環境アドバイザー」を削除した方が良いのではないか。 | ご指摘の箇所については、指摘通りに修正しました。 |
17 | p65 | 4703 | 衛生的に管理しましょう。→衛生的かつ安全的に管理しましょう。(理由:安全管理上) | ご指摘の通りに修正しました。 |
18 | p86 | 6204 | 「規範」に適温域の数値をあげることは問題です。例えば乳牛は「規範」で10~20℃と示されていますが、西南暖地の夏季には牛舎に冷房装置を入れない限りこの温度範囲で牛を飼うことは困難です。また、飼養環境と一口にいっても温度、湿度、輻射熱、風などの気象要因はもとより、空気の質、におい、浮遊病原菌、牛床の材質、濡れや汚れの程度などを含みます。これらについても適正化が必要です。記載が不十分です。 | 温度域は、あくまでも理想的な範囲について述べたのであり、そうしなければならないというものではありませんが、誤解を招くといけないので削除しました。実際には、九州の乳牛などは、夏場には望ましくない環境に置かれることになるので、乳量が下がるなどの問題が出ています。細かいキーワードとその具体的な対応については、「GAP実践ガイド」で随時説明していく予定です。GAP規範は、あくまでも基本を書くようにしていますのでご理解下さい。 |
19 | p87 | 6205 | 栄養管理についての記述と思われますが、飼養標準の養分要求量を満たすように給与量を決めても、家畜はその通り食べてくれるとは限りません。食べさせるための管理をしっかりしないとどうにもなりません。また、リンと重金属について過剰を戒めていますが、環境汚染を考慮すれば、我が国にとっては窒素とカリの過剰投与がリンと重金属に勝るとも劣らない大きな問題ですが記載がありません。「規範」に含ませなくてもよいのでしょうか。 | 家畜の栄養管理は、環境・人・農産物(食品)に対するリスク管理の点ではあまり関係がないので、GAP規範で扱わないことも考えましたが、家畜の快適性に係るアニマルウェルフェアの観点で残してあります。また、カリウムの過剰投与が、環境・人・農産物(食品)に影響するほどのリスク要因にはならないと考え、取り上げていません。GAP規範の目的を宜しくご理解下さい。 |
20 | - | 6章 | 農業の第一義は、良質の食料を、一定量、安定して国民に供給することにあります。この実現のために、品質の大きな部分を占める安全性は避けて通れませんし、安定供給のためには持続性が必要になり、量の確保には生産性の向上が不可欠です。このようなトレードオフの関係にある条件をクリアしてゆくことが農業では必要です。従って畜産の場合は、家畜管理のみではなく飼料についても『規範』が必要です。どの家畜もいわゆる購入飼料を使っていますので、飼料メーカーはもとより販売を目的に飼料を製造している農業者も守るべき規範を策定する必要があります。口蹄疫発生国から飼料を購入する、ポストハーベスト農薬にまみれた輸入穀類を使うなど畜産農家が目配りをしなければならない飼料の問題は数多くあります。国内に限っても最近は自給飼料についてもアウトソーシングが進み、いわゆるコントラクター組織が糞尿処理と自給飼料生産を担っているケースが増えています。「日本生産者GAP 協会」が作る『規範』である以上、この部分を無視できないと思います。 | 常に食料生産と環境保全が両立するように考えていかなければなりません。現在、これだけ環境保全が叫ばれている中で、農業は当然、環境を大切にする環境保全型農業にする必要があり、欧州で実施できていることを日本でも実施できるようにしたいと考えています。また、飼料供給の問題は、環境・人・農産物(食品)に対する直接的なリスク管理の問題ではないと考えています。規範が必要であるとしても、GAP規範ではないと思います。 |
21 | p86 | 6201 | 「飼養管理」は大変広い概念で、繁殖のための精液選択(育種)、繁殖管理、飼料の給与メニューの策定と給与方法、家畜の行動管理、衛生管理、生産物の管理、排せつ物の管理などを含んでいます。従って、「飼養管理や糞尿管理が行き届いた畜舎では、悪臭も少なく、疾病の発生も少なく、資源の有効利用が図られ、周辺への環境汚染を防ぐことができます。」とありますが、糞尿管理は飼養管理に含まれますし、その適正化は「資源の有効利用」と「周辺への環境汚染を防ぐ」ことのみが目的ではありません。飼養管理の意味と範囲をご理解の上で見直しをお願いします。 | 「飼養管理」と「糞尿管理」については、ご指摘の点を踏まえて修正しました。なお、このGAP規範の中では、飼養管理の中でも、家畜糞尿の「資源としての有効利用」と「周辺への環境汚染の防止」が重要と考え、この点を強調して記述しています。 |
22 | p88 | 6章3節 | 6.3では放牧のメリットのみを取り上げています。しかし、放牧方式を取り入れた生産方式では、栄養的にも衛生的にも生産物の品質は安定せず、また生産量も不安定です。このため、多くの研究がなされてきましたが、未だに解決されていません。関係者が食料を生産しているという意識よりも、ここに書かれているような「自然にやさしい」とか「牛の健康に良い」とかといった、いわばイメージと個別農家の収益性を頭に置いていることもあって、我が国の放牧農業のあるべき姿という点の議論が不足しています。土地が狭く、急傾斜地や中山間地のような複雑な地形が多いこと、気候は湿潤で土地は火山灰です。このため「適正な」放牧をしても、ピロプラズマのような寄生虫による疾病があり、また、鶏や豚のような中小家畜では野生動物、野犬などの被害もあります。従って、放牧が発達した土地と似た条件にある地域でしか、放牧は成り立っていないのです。このような欧米との立地条件の違いをふまえた「規範」が必要です。 | GAP規範では、生産性の問題とか、品質の問題とかについては、基本的に触れていません。GAP規範では、環境・人・農産物(食品)に対するリスク認識とそれによるリスク評価、リスク管理の問題であり、放牧は、自然環境に与える影響が大きいということで、GAP規範で取り上げる必要があると考えています。 |
23 | p92 | 6章5節 | 6.5も、環境というものに対する考え方が少し狭すぎるように思います。ここでは、いわゆるふん尿の処理について多くのページが割かれていますが、どう処理しても糞尿を消し去ることはできません。環境保全型農業を推進するためのキーワードの一つは「循環」と思います。耕種部門の農場副産物、食品産業の残渣等は家畜の飼料として利用されていますが、畜産部門の残渣である家畜ふん尿に関しては耕種部門での肥料や土壌改良資材としての使用量が年々減少しています。すなわち、生態系の中の一員にすぎない農業が物質循環の流れを滞らせて問題を引き起こしているのです。これは個々の生産者の力のみでは解決困難な問題です。生産者を強く念頭に置いた本「規範」の限界であり、我が国農業のあるべき姿には程遠いものになっています。 | 欧州では、環境を維持するために放牧畜産に制限を加えています。欧州の面積あたりの適正な放牧頭数で見ますと、日本では大部分が過放牧になります。家畜糞尿は非常に大きな窒素の汚染源でもありますので、適正な処理が出来ないのであれば、畜産が制限されることになるという危機意識が必要かと思います。地下水が飲めなくなり、湖沼・ため池が酷く汚染されて潅漑にも利用できなくなり、問題が深刻になりつつある現状をどう解決していくのか、という問題の一環で考える必要があると思います。このような重要な問題を、国はまだ本格的に対応していません。法律的にも不備があるといわざるを得ません。GAP規範は、これらの問題に警鐘を鳴らすとともに、農業生産者の立場で改善していこうという「行動規範」にもなります。ご指摘のように、家畜排泄物の「循環利用」は非常に重要であり、今後とも強力に推進する必要があると考えています。宜しくご理解下さい。 |
24 | P95 | 6601F | 水質汚濁防止法の囲み中の5~6行目「・・・特に畜産業でネックとなっている項目は、無機態窒素・・・健康項目と生活環境項目の一律基準値が100mg/Lとなっています。」において、「と生活環境項目」は削除したほうがいいのではないか。なぜなら、生活環境項目の基準は、特定事業場の排水量50m3以上の大規模なものについて窒素(全窒素)で日間平均60mg/L、最大120mg/Lと定められており、窒素の形態、基準の範囲、基準値等が異なるので健康項目と生活環境項目は一緒にできないためです。また、生活環境項目は水源地などの地域条件によって上乗せ基準やさらに公害防止条例があり、一律基準としては」論議しにくい点があります。 | ご指摘のように修正させていただきました。 |
25 | P95 | 6601F | 囲み記事の8行目の(参考616)は(参考602)のほうが良いのではないか。なぜなら、参考616の「家畜排せつ物の・・・法律」の中には家畜排せつ物の管理の適正化については詳しく記述されていますが、表にあるような基準値は示されていないからです。 | ご指摘のように修正しました。 |
26 | P95 | P95 | 囲み記事の最後の行の(参考617)は(参考620)の方が良いのではないか。617は肥料取締法なので、都道府府県の公害防止条例の適切な参考文献にはならないと思います。なお、全国の都道府県別の規制基準を120ページにわたって網羅した文献としては、「畜産環境対策全書2005年度版」鶏卵肉情報センター(2006年2月)が参考になると思います。 | ご指摘の箇所について修正しました。ご指摘有難うございました。 |
27 | p98 | 6章7節 | ここで急にサイレージのしかも廃液が出てくることは意外です。日本の湿潤な気候条件では牧草を乾燥することは難しく乾草は作りにくいため、日本独自のサイレージ調整・給与技術が開発されています。その結果、排液が問題となるのは構造的にタワーサイロに刈り取ったままの高水分の牧草を詰め込んだ場合です。最近では、材料を予乾することや発酵促進のために乳酸菌やギ酸などの添加物を使う技術もできています。サイロもタワーサイロはほとんど使われなくなっており、バンカーサイロやラップサイレージが主流になっています。バンカーサイロでは排液が出ないような構造にすることはそれほど難しくありませんし、ラップサイレージから排液が出るのはネズミなどの野生動物やカラスなどの野鳥などにラップを破られた場合です。ラップが破られると、排液の問題よりもサイレージが腐敗し、飼料として使えなくなってしまいますので、この方が大きな問題です。しかしここでは「サイレージからは排液が出るもの」とした書き方になっており、現状の認識がずれています。この部分の参考文献はイングランドの「規範」にはなっていますが、彼我の飼料基盤の違いを考慮しなければなりません。 | サイレージから出てくる排汁はBODが非常に高いので、環境汚染につながらないよう取扱いに注意が必要であるというリスク認識を与える項目です。欧州では、排汁を肥料にしたり、餌に混ぜたりすることが推奨されていますが、日本では「リスク要因である」という認識すら出来ていません。この項目は、リスク認識を求めるものであり、「排汁は環境汚染になりますよ」、「バンカーサイロにひび割れもなく、地下水汚染が起こるようなことはありませんね」、「ラップサイレージの排汁を適切に扱っていますね」と言うことなどであり、先ずは排汁の環境汚染リスクに気が付いてもらえればそれで良いものと考えています。半乾燥地帯の欧州でも、サイレージの排汁処理を大きく扱っており、湿潤地帯の日本では牧草や飼料作物の乾燥は大変なことであり、排汁の処理が問題になります。ラップサイレージでも、排汁が出ると牧草地に撒いたりしていますが、この排汁が表面水や地下水に入らないよう、特段の注意を払う必要があると考えています。参考文献としては、北海道畜産試験場のものを追加しました。なお、GAP規範では、「排液」という言葉を、最終的に、畜産関係で使われている「排汁」という言葉に替えました。 |
28 | p99 | 参考資料607 | 誤字の訂正です。607の「畜産環境対策大辞典(第2版)」は「畜産環境対策大事典(第2版)」に訂正して下さい。 | ご指摘の箇所、修正しました。 |
29 | p103 | 7303 | 「廃棄物運送業者としての登録する必要はありません」のあとに,「産業廃棄物を運搬する車両の表示及び書面の備え付け(携帯)が必要」である旨,追記してはいかがでしょうか。 | ご指摘の通りですので、追加したいと思います。 |
30 | p103 | 7304 | 「マニフェスト交付日から90日以内にB2,D票,180日以内にE票が返送されない場合,排出事業者は委託した廃棄物の状況を把握し,適切な措置を講じ,都道府県知事等に報告する義務がある」ことや,「マニフェストを交付した全ての排出事業者は,毎年6月30日までに前年度の交付状況を都道府県知事等に報告する義務がある」旨を追記してはいかがでしょうか。(理由)農業においては,事業者という認識が薄く,自らが処理責任を有していることを知らない方が多いと思います。委託業者に引き渡せば,終わりだと思っておられる方が多いですが,委託業者が適正に処理したか確認する責任は,排出事業者にあります。委託業者が悪いことをすれば,最悪の場合,排出事業者まで責任が及ぶことも有り得るので,その辺の認識を広めるためにも,是非,この規範に取り上げて頂きたいと思います。 | ご指摘のような具体的手順については、この規範に記述するより、別途詳細の「GAP実践ガイド」等で示したほうが良いと考えています。なお、排出者責任についてのご指摘は重要と考え、この規範に反映しました。 |
31 | p108 | 8章1節 | 食品安全における「リスク分析」とは、食品中に含まれる危害要因を摂取することによって人の健康に影響を及ぼす可能性がある場合に、その発生を防止し、又はそのリスクを最小限にするための枠組みをいい、リスク管理、リスク評価及びリスクコミュニケーションの3つの要素からなるものであり、国際的に合意された枠組みです。HACCPでは、危害要因分析(ハザードアナリシス)を行いますが、これは「リスク分析」とは異なるものです。原案の記述は「リスク分析」について誤解を招くものであり、食品安全に関するリスク分析について言及するのであれば、国際的に合意された枠組みに基づくべきと考えます。 | 農林水産省では、農産物・食品のリスク分析とは「食品中に含まれる危害要因(ハザード)を摂食することによって人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある場合について、その危害の発生を防止し、またはその発生リスクを最小限にするための枠組みを言う」と定義しています。「リスク分析」と言う用語は、農業分野では誤解を生みやすいので、「リスク評価」と言う言葉を用いています。私達の定義する農業分野の「リスク評価」とは、農業環境、自然環境、労働災害、食品安全などについての危害要因をそれぞれリストし、それらについての危害の発生が予測される環境汚染被害、人の労災被害と健康被害などを、評価者の知識と経験(リスク認識)に基づいて再現性のある評価を行うことであるとしています。農業分野の場合のリスク評価は、評価者が常に的確な評価(気付き)ができるように現場における研修に努めるとともに、生産者も実際に危害が発生しないよう「良い農作業の実践を習慣付けるようにする」ことを広義のリスク評価としています。先ず、広義のリスク評価が適正に行えるよう、リスク認識を高めることが重要であると考えています。日本GAP規範の用語解説を参考にして下さい。 |
32 | p108 | 農作物の安全性と食品衛生 | 食品の加工・流通・消費に至るまでのすべての段階を適正に管理するHACCPと製品素材のトレーサビリティーを連携した消費者に安全と安心を確保した適正農業規範の確立をグローバルな市場に提供することが今こそ求められているのではないでしょうか。 | この「日本適正農業規範」(日本GAP規範)では農産物が農場を出るまでの農業のあり方について書かれていますが、農場を出てから加工・流通・販売に至るそれぞれの段階においても責任ある管理がなされる必要があり、それによってはじめて安全・安心な食品が消費者に届けられると考えています。そういう意味で、日本でも、欧米で既に確立されている「適正流通規範」(Good Distribution Practice)などの構築も非常に重要であると考えています。 |
33 | p110 | 9401 | 農業機械の取扱いにおいての追記事項:機械類の保管管理が掲げられてないので、使用しない時の機械類の安全的な保管の規範があっても良いと思います。 | ご指摘の内容に沿い、修正しました。 |
以上